なぜ⾏列ができる店は、仕⼊れが巧みなのか

なぜ⾏列ができる店は、仕⼊れが巧みなのか

先⽇、筆者がJR⼤阪駅に直結しているエキマルシェ⼤阪(http://www.ekimaru.com/)へと⾜を運んだ際、ある店に⾏列が出来ていました。

気になって覗いてみると「パイフェイス(Pie Face)」(http://www.duskin.co.jp/service/pieface/)というお店でした。オーストラリア発祥のパイ専⾨店です。2017年9⽉にオープンして、関⻄には初出店。

ミートパイとコーヒーを中⼼にした商品展開で、20〜30代の⼥性客を中⼼に賑わっていました。

そこで、ふと気になったことがあります。飲⾷店で⾏列ができるためには、魅⼒的な商品や空間だけではなく、裏側の秘訣がなにかあるんじゃないだろうか。

今回のコラムでフォーカスをしたいのは、店舗経営には⽋かせない仕⼊れです。お客様に提供する料理・ドリンクは、クオリティも値段もすべて仕⼊れ⼒が根本的には鍵を握っています。

そこで実例とともに、具体的な秘訣を⾒ていきましょう。

本題に⼊る前に、そもそも⾏列が出来ることで、どんなメリットがあるのかを解説しておきます。

⾏列が⽣み出す「安⼼感」とは

⼈が列をなす光景には、思わず視線が引き寄せられてしまいます。飲⾷店だけに限らず、テーマパークや名所など。気がつけば、⾃分も⾏列に並んでしまっていた・・・なんてことも。

⼈は、なぜ⾏列に引き寄せられてしまうのでしょうか。なぜ並んでまでも買ってしまうのでしょうか。

「セブン-イレブンがなぜダントツなのか理由がわかる本」という副題がついた『鈴⽊敏⽂がやっている「お客様⼼理」の読み⽅』で、このように説明されています。

「安⼼感が⾼くなると購買度も⾼くなる「損したくない⼼理」「安⼼の⼼理」は、⾏列のできる⼈気店にも当てはまります。⾏列ができていると、とりあえず並ぶ⼈もいますが、「⾏列しているから」→「⼈気がある店」→「美味しい店」という連想が⽣まれるわけです。つまり、⾏列は「安⼼感」を⽣み出している装置とも⾔い換えることもできます。安⼼すればするほど、⾏列は⻑くなるのです」(1)

この記事からわかることは、1つ。

お客様が求めていることは、安⼼感(=美味しい料理が⾷べられる)ということです。安⼼できる店には必然的に⻑蛇の列が出来るのです。

では安⼼できる店に求められる条件とは何でしょうか。

端的に述べれば、それはコストパフォーマンスの良さです。メニューが美味しいだけではなく、お客様が⽀払った⾦額に相応するか否か。

ここで問題となるのが、流通の問題です。⼤⼿のグループ企業であれば、滞りなくシステム化されているでしょう。⼤量に安価で仕⼊れる仕組みや、農園や漁業組合と直接結びついた取引が整備されています。

しかしながら、個⼈店では⼩さなロットで仕⼊れをしなければなりません。流通マージンや、仲介業者の⼿数料が上乗せされた⾷材を買い付ける必要があります。

このことで必然的に仕⼊れコストが上昇して、販売価格もアップします。お客様にとっては安⼼しかねる価格で、提供することになるかもしれません。

そこで次は、ちょっとした⼯夫で個⼈店であっても仕⼊れに成功をさせて、⾏列を⽣み出した店舗のケースをインタビューをもとに紹介します。

みんなわかってはいるが、誰もやろうとはしない仕⼊れ術

仕⼊れ術

今回、取材をさせて頂いたのは三宮・元町界隈でステーキ・ハンバーグ店を経営するオーナーシェフです。このエリアでも圧倒的な⼈気を誇っています。

三宮・元町と⾔えば「焼⾁・ステーキ・ハンバーグ」業界で激戦区。100店舗以上の競合店が、ひしめき合うエリアです。。

そんなレッドオーシャンの市場に⾶び込んだオーナーシェフが、他店に負けないポイントを語ってくださいました。

「うちの強さは、圧倒的な安さです。A5ランクの⽜⾁も神⼾⽜も提供していますが、他店に⽐べて安いんです。」

例えば同ランクのフィレ⾁ステーキで他店と⽐較をした場合、3割ほど割安の価格帯で提供しています。

しかし、それで安売りになってしまわないのでしょうか。ライバル店と差別化が出来ているのでしょうか。

さらに詳しく聞いてみると、

「当店は、ランチタイムで勝負しています。低予算でいいお⾁のランチが楽しめます。50名~60名以上のお客様で、毎⽇溢れかえっていますよ。20席ほどの店なので、いつも⾏列が出来ていますね。11時から13時までが勝負。ディナーはぼちぼちやっています。」

周辺の競合店は、ディナー営業がメイン。そこで⽬をつけたのがランチです。ライバルのステーキ店はランチをしていても、コース料理のみ。ないしは⾼単価。そこに⽬を付けた結果、功を奏しました。

すなわち他店と勝負をせずして、勝てるフィールドで勝つべくして勝利を収めたということです。

では、なぜ⾼品質のお⾁を安く提供できるのでしょうか。

「もともと精⾁店で修業をしていました。なるべく仲介業者を通さず、直接仕⼊れをしています。ただ、これだけじゃないんです。じつは共同仕⼊れをしています。同じ部位で、同じ状態の⾁を仕⼊れたい他店に声をかけて、協⼒しているんです。⾃分から知り合いの店に声をかけました。今は3店くらいですね、同じ規模間のお店で買い付けているんですよ。」

個⼈店では仲介業者を介さない取引は、少ないロットのため極めて困難です。しかしながら、数店舗が協⼒をして取引をすれば⼤量に仕⼊れることが出来ます。

「この理屈はみんな知っているでしょうけど、やらないんです。⾯倒くさそうっていうのと、実際に失敗したら痛⼿でしょう。踏ん切りがつかないし、勇気が出ないんです。でも、やってみれば意外と上⼿く⾏くもんです。仕⼊れ値が圧倒的に安くなりました。」

ちょっとした勇気を出すか否かがポイントだと語るオーナーシェフ。やった⽅がいいと思うことは、必ず決断⼒や⾏動⼒が問われます。そこを踏み出せる勇気があるかどうかで、経営状況は左右されてしまうのです。

「この⽅法で取引が始まればこっちのもんです。共同で買えない部位があっても、安くで買い付けられるか交渉出来るんですよ。⼀度、取引が始まれば交渉しやすくなります。ようは業者と突破⼝を開けるかどうかがもっとも重要なんです。」

オーナーシェフの地道な交渉や取引によって、圧倒的に有利な仕⼊れを実現しています。このことで、いわゆる安⼼して⾷事が出来る店、コストパフォーマンス抜群の店として⼈気が拡⼤。⾏列の出来る店として名を馳せるようになったのです。

さいごに

3つのポイント

今回のインタビューで学んだことは、以下の3点にまとめられます。

①仲介業者を介さず直接仕⼊れること。②同じ⾷材を、他店共同で仕⼊れること。③取引を始める⾏動⼒・決断⼒を持つこと。

今までの仕⼊れの仕⽅を変えるだけで、または交渉をしてみることで、仕⼊れに変⾰が起こるかもしれません。

協⼒しあえる店なんてないのでは︖直接の仕⼊れは困難では︖と思っている限りでは、いつまでも思うような買い付けは出来ないでしょう。

今回の記事を参考にして料理の腕前だけでなく、仕⼊れついても巧みな⼿腕を発揮する⼿がかりとなれば幸いです。

【参考⽂献・サイト】

(1)伊敷 豊(著)『鈴⽊敏⽂がやっている「お客様⼼理」の読み⽅』こう書房

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