やりたいことが見つからない人のための「やりたいことがわからない問題」を解決する方法(後編)

「やりたいことがわからない問題」を解決する方法(後編)

前回からシリーズでコラムをお届けしております。テーマは、飲食店における人材不足の問題を解決する方法です。

前編では、人材不足と言っても、「正社員」と「非正規社員」では取り組むべきことが一緒ではないと、対比しながら解説しました。

中編で紹介したのは、正社員の雇用をする方法です。キャリアデザインを意識した採用活動に成功した事例を取り上げました。

ここで学んだことは、採用したいターゲット層を絞ること。そして興味を持たれる労働条件を設定することです。

後編では、非正規社員にフォーカスします。アルバイト・パートの人材不足は慢性的で、かつ深刻化しています。帝国データバンクの調査(1)では、78%の飲食店が非正規社員の人材不足を感じています。

どうすれば問題から抜け出すことが出来るでしょうか。

アルバイト採用に成功した事例~三宮・ステーキ店~

留学生や外国語が堪能なスタッフ

今回、取材をさせて頂いたのは、三宮でステーキ店を運営する店主です。三宮・元町エリアは、神戸牛を売りにしたステーキ店、焼肉店、ハンバーグ店が密集しています。

競合店がひしめき合う中でも、高い人気を誇っている店舗です。正社員スタッフは、少数精鋭で営業しています。一方でアルバイト・パートを充実。大学生を中心に留学生や外国語が堪能なスタッフを中心に雇用しています。海外のお客様が多いためです。

大学生スタッフの雇用は、リスクがあります。なぜなら大学生は卒業をするからです。勤続できる期間は、長くても4年。数年のサイクルで、新規スタッフを採用し続けなければなりません。

しかし、こちらのお店では募集をかければ、すぐに充足をしてしまうほどの人気ぶり。どのような手法で採用しているのでしょうか。

店主曰く、ターゲットである学生に興味を持ってもらうことが大切だと言います。

『学生にとってアルバイトは生活の中心ではありません。ライフスタイルの1つです。充実した学生時代を過ごせるかどうかが鍵を握っています。オシャレに働きたいし、モテたいし、楽しみたい。いわゆるリア充ってやつですか(笑)。学校やサークルよりも、ほかのバイトよりも、リア充できそうな職場って思ってもらうことが重要なんです。』

正社員の採用は、キャリア形成を注意すべきだと前回コラムで述べましたが、非正規社員において目を向けるべきはライフスタイル。

もしキャリアデザインを考えてアルバイトをするのであれば、資格取得につながる仕事、関わりたい業界に関する仕事が選ばれるでしょう。

ですがやりたいことを実現したり、夢・目標に近づいたりするようなアルバイト・パート求人はそれほど人気ではありません。充実したライフスタイルを送りたい学生のニーズには該当しないのです。

『神戸には沢山の大学や専門学校があります。でも飲食店も多いので、学生の奪い合いになってしまいます。そこで他店と比べられた際に、うちが選ばれる条件をいくつか設定しました。
まず外国語を話せる、または学びたい学生に照準を合わせました。外国語学部や外国語大学、国際系の学校に通う学生(留学生を含む)が対象となります。留学や海外旅行をしたい学生はお金が必要ですし、語学力も身につけたい。だから、外国語で接客できるスタッフは時給を100円以上アップしています。と言っても、未経験者でも1000円スタート・交通費も全額支給なので、好条件からのスタートです。』

近隣店舗の時給をリサーチして、最低時給をもっとも高い水準に置きました。交通費も制限はありません。これも好評らしくて、県外から通勤するスタッフも多いようです。さらに外国語を話せるスタッフは、外国語のトレーニングをしながら仕事に精を出すことが可能となります。

『ちなみにお店では年に一度、スタッフで旅行を企画しています。すべてスタッフに任せています。私は企画にほとんど関与しません。どこを巡って、どこに泊まるか。予算も含めてスタッフにやってもらいます。旅のしおりも手作りですよ(笑)。いずれ海外に行く時の準備運動にもなるでしょ。BBQとかもやりますが、これもスタッフ任せ。私がやったら絶対に盛り上がりません。仕方なく義務感で旅行やBBQをすることになります。学生にとっては、楽しさしかないでしょうね。仕事でやりがいを持たせて、仕事以外でも楽しさを作る。おかげでスタッフ同士の仲もかなり良いですよ。』

旅行では淡路島や京都、大阪など関西圏の観光スポットを巡っているとのこと。アルバイトでも、とくに学生のスタッフをいかに楽しませることができるのか、店主は接客をするのと同じくらい価値を置いていました。

「スタッフが楽しくしていればお客さんにも楽しんでもらえる」というような単純な発想で説明がつくでしょうか。まかないも特選和牛のステーキが食べられると言うのです。

ただし、労働条件だけがすべてではありません。店舗・制服ともにスタイリッシュでお洒落だったため、友人・恋人・家族に自慢が出来るアルバイト先というイメージが、人気の要因の1つとなっている可能性もあります。

さいごに

後編のポイント

後編のポイントをまとめておくと、以下の通りです。

①採用したいターゲット層を絞る:外国語を話せる・話せるようになりたい学生
②ターゲット層が興味を持つ労働条件を設定する:外国語を話せる場合は時給アップ・交通費全額支給・まかないは高級ステーキ・旅行やBBQの企画・お洒落な労働環境

他店の情報と見比べた際、いかに際立った求人に映るのか。アルバイト採用の場合、ここに徹底してこだわるべきです。

正社員・非正規社員の採用戦略についてシリーズで実例とともに考察をしてきました。それぞれに適した方法で、人材不足を乗り越えられるチャンスは転がっています。今回のシリーズ記事を実践的に活かして頂ければ幸いです。

【参考文献】
(1)人手不足に対する企業の動向調査(2017年7月)|帝国データバンク

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