なぜ、あの店は欲しい人材を難なく採用できるのか(中編)

なぜ、あの店は欲しい人材を難なく採用できるのか(中編)

前回からシリーズでコラムをお届けしております。テーマは、飲食店における人材不足の問題を解決する方法です。

前編では、人材不足と言っても、「正社員」と「非正規社員」では取り組むべきことが一緒ではないと、対比しながら解説しました。

今回(中編)は、正社員の雇用をする方法について実例とともに紹介します。前回も述べましたが、キャリアデザインを意識した採用活動が、正社員の場合には必要です。

安定性や将来性、長期的な視点で見る求職者に対して、いかに訴求出来るかがポイントになります。

正社員採用に成功した事例~三宮・和食店~

いわゆる割烹ではありますが、顧客単価は約1万円ほどでカジュアルに和食を楽しんでもらうことをモットーにしています。

料理長をしながらも、採用活動も担当されている店主。
正社員は2名、パート・アルバイトは6名でお店を運営しています。

引き続き人材募集はしているのですが、今すぐにでも欲しいというわけではありません。
とくに驚かされたのは、正社員2名を採用する際はすんなりと上手くいったようです。

そのノウハウを店主が明かしてくださいました。

『まず、どんな欲しい人材に来て欲しいか考えたんですよ。まず未経験でもいいから、若い子がいい。うちは割烹なんで、一から料理の修業をして、頑張って行きたい真面目な人じゃないといけない。じゃあ、どこにそんな人材がいるか、どんな人だったらうちで社員で働きたいって思うかイメージしてみました。1つ言えるのは関西、とくに神戸市内とか大阪市内の人材は難しい。よその店と人材の取り合いになる。個人店はグループ企業や老舗と比べると不利。求人も沢山あるし、すぐ辞めて転々とする人も多いでしょう。そこで目をつけたのが地方です。例えば、東北や九州にいる10代後半から20代前半の若い子で、本格的な割烹を学びたい人。さらには地元で飲食店を出店したい目標がある人。そんな人に来てもらえたらと思うようになりました。』

まず手をつけたのはターゲットを設定するところから。経験者・未経験者歓迎、という謳い文句をよく見かけますが、ターゲットを絞ることで人材像を明確にしていきました。

ここからがポイントだと店主は言います。

『次に考えたのは、どんな条件で募集をすれば地方在住の人が、うちで働きたくなるかを考えました。1つは経済面です。ただし給与ではない。不慣れな土地に来てもらうし、はじめはお金もないので、住む場所を用意するのがいいと思いました。いわゆる社宅というやつですか、地方出身者のためにお店近くのマンションを借りることにしたんです。賃料はお店が出すという条件を設定しました。ただし住んでいいい期間は2年。後は自分でマンションを探して借りてもらう。2年もあれば土地勘も出てくるし、お金も溜まるでしょう。』

店主自身も四国地方出身で、関西に出てきた時は住む場所に困ったと言います。その時の実体験をもとに、地方出身者への配慮をしました。

待遇をよくするよりも、盤石な保証体制を整えること。こちらの方が、地方出身者にとっては魅力的に感じられるのでしょう。

盤石な保証体制

ちなみに実際に雇用したスタッフは借り上げのマンションをわずか半年で出ていき、自分でマンションを借りて住んでいるようです。

『あとは、労働環境の強みですかね。うちは個人店なので、店主みずから料理ことから仕入れ、経営のことまで教えることができます。大型の店では、出世していかないとすべての学ぶのは難しいですよね。時間がかかるし、忍耐力がいります。将来的にグループ店ではなく、うちのような個人店を地元に帰って出店したい人にはピッタリだと思ってもらうようにしました。』

人材獲得までの流れとしては、まず地方に在住する知人の紹介と求人サイトの広告で募集。雇用条件および人材像をしっかりと伝えると、すぐに該当する方を紹介してもらえたとのこと。

結果的には、20代前半の志願者2名を採用することが出来ました。どちらの方も地元で和食店を出店するのが夢だそうです。

そのためか出勤時間よりも1時間早く来て、閉店後も遅くまで毎日残って勉強をするほど。素直で誠実なスタッフを採用することが出来て、本当に良かったと店主は実感している様子でした。

さいごに

今回のポイント

今回のポイントをまとめておきましょう。

①採用したいターゲット層を絞る:地方出身者(都心部で1から修行して、地元で開業したい10~20代)
②ターゲット層が興味を持つ労働条件を設定する:住居の用意・住居費の負担・教育体制

この2点です。
シンプルで、かつ実践もしやすい方法ではないでしょうか。

門戸を広げておくのも1つの方法です。しかし様々な条件で募集をしてしまうと、求職者にとっては自分に適切な職場か判断がつきません。

慢性的な人材不足に陥っている場合、お店にとってどんな人材がふさわしいか詳細まで考えてみるのはいかがでしょうか。

後編では、もう1店舗の実例も紹介します。正社員ではなくアルバイトの採用方法について取り上げます。難易度は下がるものの、他店舗との差別化が求められます。

いかに求職者にとって魅力ある求人として認識されるのか、成功事例を見ていきましょう。

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