焼肉市場学~A5ランク・炭火焼肉・国産和牛だけでは、なぜ勝てないのか~④

焼肉市場学~A5ランク・炭火焼肉・国産和牛だけでは、なぜ勝てないのか~④

焼肉市場分析をテーマにしたコラムを、5回のシリーズでお届けしています。

前回は、焼肉店が持つエンタテインメント性について考察をしました。余暇市場で拡大し続ける国内旅行との類似点に着目。

それは手軽に楽しめる贅沢、ちょっとした非日常体験といった特徴です。
エンタテインメントとしての焼肉は、消費者が主体的に関わることで満たされることまで、明らかにしてきました。

焼肉店が成功するためには、このポイントを押さえておく必要があるでしょう。
今回からは、どんな対策を具体的にすればいいのか紐解いて行きます。

“焼肉店の激戦区”神戸の三宮・元町エリアの事例

1回目のコラムで取り上げたように「焼肉・ステーキ・ハンバーグ等の専業店」の業態は、約300億円という市場です。

このマーケットを狙って、新たに出店する店舗も少なくありません。
しかしながら、ライバル店がひしめき合っているのが現状です。
レッドオーシャンの中で勝ち抜いて行かなければなりません。

ここで必然的に求められるのは、お店の差別化や強み、セールスポイント。
他店にはない来店動機がなければ、お客様から選ばれることは困難です。

そこで実際のケースを見ていきましょう。
焼肉業界では、激戦区と呼ばれるエリアがあります。
焼肉の激戦区
関西では、神戸市内の三宮・元町エリアがその1つです。

阪急神戸線「三宮駅」・JR神戸線「三ノ宮駅」界隈から「元町駅」までのエリアで、ひしめき合う焼肉店は、130~140店舗。

例えばGoogleで「三ノ宮 焼肉」、「三宮 焼肉」というキーワードを入力してみましょう。(2017年12月18日時点)

インターネット広告を除く自然検索の結果でトップに表示されるのは、「食べログ」です。三宮エリアのTOP100および該当エリア141件の店舗情報が発表されています。

さらに上位に表示されるグルメサイトも見ておきましょう。「ぐるなび」では97件、「ヒトサラ」では149件、「ホットペッパーグルメ」では114件(韓国料理を含み)の店舗情報が掲載されています。

このように多数の競合店が、三宮・元町エリアに集まっていることが確認できます。

「神戸牛」「A5ランク」という既視感

「神戸牛」「A5ランク」という既視感
ここで問題となるのが、お客様にとっての決め手です。
いくつもある選択肢の中で、判断材料となるものは何でしょうか。

予算感から利用シーン、料理、空間など。
近年の傾向として、以下の強みを打ち出す焼肉店が注目されています。

・「神戸牛」「神戸ビーフ」(または松坂牛・米沢牛・近江牛・三田牛を含む銘柄牛)
・「A5ランク」(ないしはA4ランクを含む最高ランク)
・「炭火焼き」(ないしは鉄板焼きスタイル)

とりわけ三宮という地理的な特性を考えれば、「神戸牛」「神戸ビーフ」は優位な食材です。

そのもそも「神戸牛」「神戸ビーフ」とは、どのような牛肉でしょうか。
定義としては、以下の通りです。

兵庫県で生産された「但馬牛たじまうし」(黒毛和種)からとれる枝肉が一定の基準を満たした場合に、「但馬牛たじまぎゅう」の愛称の代わりに用いることが出来る牛肉のブランド名。旧来の正式名称は神戸肉(こうべにく)で、一般には神戸牛(こうべぎゅう)とも呼ばれる。日本三大和牛の1つとされる。神戸肉の証しとしては、兵庫県の花「野路菊」を形どった刻印が押されている。日本国外では、欧米を中心に知名度が高く、「Kobe Beef」として知られている。(1)

「神戸牛」「神戸ビーフ」は、売りになる高級食材です。

例えば、夫婦やカップルのデートや旅行、そしてイベント(クリスマスやバレンタイン、ホワイトデー、ハロウィンなど)やパーティーといった利用シーンで人気です。

「神戸牛」「神戸ビーフ」を打ち出すことによって、お客様から選ばれやすくなります。同時に、多くの競合店で使われるセールスポイントにもなります。

神戸牛 焼肉 三宮」、「神戸牛 ディナー 三宮」というワードを入力して、Googleで検索してみました。(2017年12月18日時点)

検索結果に上がってくる店舗は、「個室焼肉神戸牛 官兵衛 三宮本店」「神戸牛・個室焼肉 大長今 三宮総本店」「神戸牛焼肉 八坐和 本店」「神戸牛ステーキ ishida. 三宮店」「神戸牛 吉祥吉 三宮店」など。
店名に神戸牛をつけた焼肉店、とくに大手・グループ企業の焼肉店が表記されます。どこも口コミサイトで高評価を獲得しており、人気の店舗であることは間違ありません。

確かに「神戸牛」「神戸ビーフ」をはじめ「A5ランク」「炭火焼き」は、お店にとってセールスポイントです。

ですがこれらの食材や調理方法は、他店もすでに取り入れているケースが多数。お客様にとっては、決め手にはなりません。

三宮エリアで焼肉店を営むオーナーシェフに、インタビューをさせて頂く機会がありました。A5ランクの神戸牛を提供しているお店でしたが、彼の一言が印象的でした。

「A5ランク神戸牛は、既視感がある。お客さんにとっては、だから何?って思われやすい。どこの店でも使っているし、良いもん食べれるのは今は当たり前のこと。これだけで勝負するのは、正直厳しい。」

既視感。目新しいものではなくなったことを意味します。
エンタテインメント性を焼肉に求めるという話に戻れば、既視感のあるものは魅力に欠けるでしょう。

ならば今、三宮エリアさらには焼肉市場でちょっとした贅沢や非日常体験を演出するものは何でしょうか。

さきほどのオーナーシェフ曰く「お客さんは美味しい焼肉を食べに来てるんじゃない。楽しみに来てはる。焼肉を楽しみに来てるんやから、楽しいと思ってもらうサービスをしないと。」

さいごに

彼の言葉をヒントに突破口が見いだせるのではないでしょうか。
次回は、主体的な食事行為をエンタテインメント化させる店づくりのコツを紹介します。

【参考文献・サイト】
(1)但馬牛|Wikipedia

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