「なぜ、あのお店は食中毒を起こした後すぐ、売上をアップできたのか?」

なぜ、あのお店は食中毒を起こした後に売上アップしたのか?

「なぜ、あのお店は食中毒を起こした後すぐ、売上をアップできたのか?」

食中毒問題が起きれば、お店の信頼度が下がって、お客様は離れてしまう・・・そんなイメージが一般的にはあるでしょう。

しかし、食中毒が発生したにも関わらず、お客様が足を運んで、売上をアップさせてしまった飲食店があります。

お店が危機的状況である中で、一体何をすれば、売上を低下させるどころか伸ばすことが可能なのでしょうか。

今回は、その秘密を紐解いていきます。

【食中毒は、飲食店における死活問題】

「なぜ、あのお店は食中毒を起こした後すぐ、売上をアップできたのか?」

今回は食中毒をテーマにしますが、問題を起こした場合に、売上を伸ばすノウハウについて、以前も取り上げたことがあります。前回は、クレーム問題でした。

『なぜクレームを改善したら、集客・売上アップにつながるの??今こそクレーム問題を、解決すべき理由』(前編)
https://colum.shokujob.com/wp/human_resources/2018/12/4734/
『なぜクレームを改善したら、集客・売上アップにつながるの??今こそクレーム問題を、解決すべき理由』(後編)
https://colum.shokujob.com/wp/human_resources/2018/12/4742/

食中毒は、飲食店で起こる問題の中でも、とても深刻な事態です。

なぜならお客様の生死・健康に関わることであり、お店の信頼度や人気を左右してしまうからです。

とりわけデメリットとなるのは、営業停止を余儀なくされることでしょう。

厚生労働省のガイドラインによれば、

「食品衛生法(以下「法」という。)第55条第2項において、厚生労働大臣は、 営業者(食品、添加物、器具・容器包装、乳幼児用おもちゃ(以下「食品等」と いう。)を輸入することを営む人又は法人に限る。)が法の規定による禁止に違反 した場合において、営業の全部若しくは一部を禁止し又は期間を定めて停止することができる」⁽¹⁾と掲載されています。

店舗側が食中毒を起こしたことが正式に認められると、3日程度の営業停止命令を受けることになります。

実際に、平成29年に発生した食中毒は1,014件⁽²⁾でした。患者数は16,464人で、死亡者数が3人。うち飲食店では598件、患者数が8,007人、死亡者は1人という結果です。

食中毒と言えば、夏場に多発する印象があります。しかし年中関係なく、問題は発生しています。2019年入ってまだ間もない1月2月でも、焼肉店やレストラン、居酒屋で食中毒事件が起きており、営業停止処分が下されています。

サルモネラ属菌、ぶどう球菌、腸炎ビブリオ、病原大腸菌、ウエルシュ菌、カンピロバクター、ノロウイルスなど、様々な病院物資によって事件は引き起こされます。

お客様を遠ざけてしまう飲食店について以前、ハード面から指摘をしたことがあります。什器や設備などを見過ごしてしまいがちになります。放置しておくと衛生問題に発展して、食中毒を起こす可能性が拡大します。

お客様に嫌われる飲食店が気がつかない、好感度を下げる2つの理由(前編)
https://colum.shokujob.com/wp/store_operation/2018/12/4906/

いずれにしても食中毒問題は、飲食店の営業において死活問題です。発生を未然に防止することが最優先されるべきですが、万全を期していたとしても起こってしまう時があります。

その際、一時的なお客様離れや売上の低迷は余儀なくされるでしょう。しかし、常識とは全く逆の現象を生み出した外食企業があります。

【なぜ食中毒の後、売上が拡大したのか】

「なぜ、あのお店は食中毒を起こした後すぐ、売上をアップできたのか?」
「株式会社 奥志摩グループ」です。伊勢志摩から届く鮮魚を味わえる炉端『奥志摩』をはじめ名古屋で17店舗の飲食店を運営しています。

事件が起きたのは2017年10月のこと。『奥志摩名駅中央店別館』にて、ノロウイルスによる30数名規模の食中毒問題が発生しました。名古屋市中村保健所から営業禁止処分が下されました。

営業再開時の発表を、代表取締役会長の中村文也氏が、Facebookにて投稿しています。

この投稿の翌日、つまり営業再開日から次の日、中村氏によって驚きの投稿がされました。

「ありがたいことです!
涙がでます!
奥志摩 名駅中央店別館も 昨日から 再び 営業を再開しました!
昨日は 満席でした!
お客様に 挨拶に伺いましたが たくさんの方から 励ましの御言葉を頂きました!
本当に ありがたいことですね!
それとね!
こんな時だからと たくさんの方から 電話を頂き 予約を頂戴するのです!!
数ある店の中から 奥志摩 名駅中央店別館を 指定して 予約を 頂けるのです!
昨日は本当に 泣けてきました!
なんて ありがたいことなんでしょう♡♡♡
本当に 人の優しさを 感じた1日でした!」

(2017年11月1日 :Facebook

お客様が離れるどころか、なんと満席だったという喜びと感謝のメッセージがアップされていたのです。なぜ、同社は危機的な状況に陥りかけながらも、再開してすぐに復活を遂げることができたのでしょうか。

翌年、事故を振り返って、中村氏はこのような投稿をしています。

「去年
当社は 食中毒を出してしまい 多くのお客様に ご迷惑と 辛い思いをさせてしまいました!
あっては いけない事故を起こしてしまいました!
ただ それによって 衛生面でも 保健所さんの支持以上に徹底的に 改善をしました!
これも 神様が もっと衛生面に気を配りなさいと
メッセージをくれたのだと 捉えました!
その時 当社にも 助けて下さるお客様が たくさんいたのです!
『ふみやさん今、困ってるだろう!
今日はふみやさんのどっかの店で飲もう!』
とか
『奥志摩さんが 今 困っているだろうから 宴会を入れよう』
とか たくさんの人が 助けて下さったのです!
その結果 一軒の店は 12日間の営業停止になったのですが
他店の売上が伸びて トータル 変わらなかったのです!
僕 その時ね!
食中毒にあわれた方々には 益々のお詫びの気持ちが湧いてきましたが それとともに 助けて下さる多くのお客様には 感謝しても しきれないくらいの思いでした!
今日は そのことを 思い出し、再び 教訓とする日になりました!
これからも事故のないように 努めていきたいものです!」

(2018年5月26日 :Facebook

本文からは、売上は結果的に伸びたこと、そしてお店が多くの顧客に支えられていることがわかります。

調子がいい時にお客様が集まるのは当然です。しかし、苦境に立たされた時に顧客が集まる店こそ、本当にファンから愛されているお店ではないのか、そんな気づきを得られる現象です。

一般常識から見れば、問題が起きた企業やお店では、客離れが進みます。しかし「株式会社 奥志摩グループ」には、そんな時にこそ助けたいというファンがいました。

なぜ根強いファンに支えられたのか。それは発信力です。中村氏によるFacebook投稿は、少ない場合でも「いいね!」は600以上、コメントは30以上集まります。多い時には、1,000以上の「いいね!」に、100以上のコメントが寄せられます。

投稿の内容は、毎日の仕事や活動、日常的な出来事に、自分の生き方や信念、哲学と結びつけたポジティブな内容が主たるものです。

多くの人から評価が高い理由を、筆者なりに3つ考えてみました。

①経営者・成功者だからとカッコをつけず、ありのまま自然体を投稿する。

→自分を偽るような言動は、他人からの評価を落とします。誰かと比べた瞬間、カッコをつけなくてはありません。「カッコいいと思う生き方を!」というタイトルで、このような投稿をしています。

「僕は、車に興味がないのです!
男の人は 車好きな人が 多くいますよね!
僕の友達の 社長さん達は 1000万円以上の高級車に乗っています!
僕は 中古車の 15年前の ランクルに乗っているのです!
推定価格40万円くらいかな?
もしかしたら値段がつかないかもです!
うちの バイトの女の子より 安い車に乗っているのです!
おそらく 年商から比べたら 全国の 社長さんの中でも かなりランクの低い車に 乗っていると思います!
ただ理由はね!
そんな自分が好きなんです!
車好きな人は ベンツに乗ったり セルシオの高級車に乗ればいいと思っています!
僕のような 車オンチの人間は これでいいのです!
ある尊敬する上場会社の社長さんが
『迷ったらカッコいいと思う生き方をしなさい!
自分に恥じない生き方をしなさい!』
と教えてくれました!
僕に とったら ベンツに乗るより その 15年前の車に 乗ってる自分が 好きなんです!
それが カッコいい と思っているのです!
僕は 常々 人と比べない生き方が大切だと 伝えています!
そして 自分が ワクワクするように 生きよと 伝えているのです!」

(2019年1月23日 :Facebook

②やり方(具体的なノウハウ)も、あり方(価値観や生き方)も、伝える。

→接客術や集客術など具体的な方法を知りたがる人は沢山います。しかし、経営に関する理念やビジョンがなければ、中身はありません。顧客の心をつかむことができません。中村氏はたった6秒の行動にも、こだわりを持っています。

いつも 頭に メガネを かけています!
そして 講演の時も そのままで 話します!
『ふみやさん!
講演の時は外した方がいいですよ!』
って 教えて頂きました!
ただね!
僕ね!
自分なりには 考えて メガネを 変えるのです(*^^*)
学校で 話す時には 黒縁のメガネをはめて 地味にしています!
自分では すごく考えているつもりなんです!
後ね!
真面目な人って 思われたくなく
ちょい悪オヤジ系 の方が しっくり来るのです!
『こんな人でも 上手くいくなら 自分も やれそう!』
と思って欲しいのです!
もともと 裕福で賢く 見た目もスーツを着こなし ちゃんとした人なら
『あんたは 特別な人やから 上手くいくのさ!』
なんて 思ってしまいがちですよね!
僕は そんな考え方をしているのです!
ただ 参考にさせて頂きます!
ありがとうございました!
うちの店には 6秒ルールがあります!
お客様が ドアを開けてから たった6秒で その店の印象が決まると伝えています!
だから その6秒で 好印象を持ってもらえるように 接客に 力を入れているのです!
6秒だろうが 7秒だろうが とにかく 大切な数秒なんです!
大切なお客様を 数秒で とりこにしたいですね~(*^^*)
第一印象も 磨いていきたいものですね~(*^^*)

(2019年2月19日 :Facebook

③心を開いて、様々な意見を受け入れる。

→他人の意見は、なかなか聞く耳を持てず、受け入れられないものです。自分とはまったく異なる価値観の人からでも、積極的にアドバイスをもらいに行く姿勢が大切です。中村氏の器の大きさがわかるエピソードがあります。

『バイトさんの 話しを聞け!』
僕は 店長たちに 伝えています!
バイトさん達や パートさんはね 貴重な意見を 持っているからなんです!
先日 新店舗の準備をしているバイトさんに 声を かけたのです!
『 こうしたら 店が良くなる!
とか あったら ちゃんと言ってね!
また メニューで 気になることがあれば
ちゃんと 教えてね~(^o^) 』
と 22歳の バイト君に 伝えたのです!
そしたらね!
『ピザの皿ですが 皿が 大き過ぎると思います!』
と言うのです!
僕ね!
確かに その通りだと思ったのです!
だから 直ぐに 買いに行きました!
また
『メニューの中に カルボラーナ風パスタってありますよね?
試食させて頂き 凄く美味しいのですが 名前を変えた方が 良いと思います!
何故なら クリーム味ですが カルボラーナの味では ないと思うのです!』
これも なるほどと思い 名前を変更したのです!
もう一つは、少しビックリしました!
『クリームチーズの塩昆布和えっていうメニューですが、あの味は僕達若い子には合わないと思います!』
と言うのです!
確かに おじさんの酒のあてには 良いが 若い子には 合わないかもと思い 味付けを 全く別ものにして もう一度 バイトさん達に 食べてもらったのです!
そしたらね!
『これなら美味しいですね~(^o^)』
って答えてくれました!
我々 40歳過ぎの ベテランの料理人が 4人で 知恵を絞り
お客様に喜んでもらえるメニューを 何回も試行錯誤して考えているのですが
若い子からは ズレてることも 少しはあると思うのです!
そして そんな時は 直ぐ 直せば いいだけなんです!

(2018年5月6日 :Facebook

さいごに

「なぜ、あのお店は食中毒を起こした後すぐ、売上をアップできたのか?」

「株式会社 奥志摩グループ」と同じレベルの食材を使っていたり、負けないほど美味しい料理を提供している飲食店は、同社以外にもあるでしょう。

しかしファンからの支持は、他を凌駕するほどです。困難に陥った時にこそ助けてもらえる飲食店。これからの店舗経営に求められるのは、新しい料理でも店舗形態でもなく、熱心な顧客づくりではないでしょうか。

そこで重要なツールとなるのがSNSです。日々の投稿によって、お客様からの支持を集められることができます。中村氏から学べるポイントをまとめてみました。

①経営者・成功者だからとカッコをつけず、ありのまま自然体を投稿する。
②やり方(具体的なノウハウ)も、あり方(価値観や生き方)も、伝える。
③心を開いて、様々な意見を受け入れる。

食中毒問題は起こさないことが理想ですが、発生したとしてもファンが味方であれば、危機的状況から脱出することができます。SNSで発信力を高めながら、顧客から真の意味で愛される飲食店を目指しましょう。

これまでFacebook・SNSを活かした飲食店経営術を取り上げてきました。日々の集客や売上アップにご活用ください。

■「その使い方、本当に合ってる?」実は違う飲食店のまちがったSNS使用法~Facebookページの作り方~
https://colum.shokujob.com/wp/news/2018/09/3848/
■本当にFacebookで顧客獲得できるのか?飲食SNSマーケティングの仕組みとは
https://colum.shokujob.com/wp/news/2018/08/3701/
■【初心者向け】集客率が2倍アップする!?人気店になるためのFacebookページの作り方~画像と色選び~
https://colum.shokujob.com/wp/news/2018/09/3883/
■【必見】飲食店がSNSするならインスタはやっておけ!!知らないとヤバい?飲食店がインスタグラムをしておくべき理由
https://colum.shokujob.com/wp/news/2018/06/3428/
■~飲食店で出会った意外なSNS活用術~なぜ、あのお店はいつもお客さんが、自然と集ってくるのか??
https://colum.shokujob.com/wp/news/2017/07/377/
■予約キャンセルはチャンス?お客さんを味方につけるSNS活用術
https://colum.shokujob.com/wp/news/2017/08/600/

【参考文献・リンク】
⁽¹⁾食品衛生法第55条第2項に基づく輸入者の営業の 禁止及び停止処分の取扱い指針(ガイドライン)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/120208-18.pdf
⁽²⁾【資料1】(H29食中毒発生状況概要版及び主な食中毒事案)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000197210.pdf

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