ドーナツ屋に学ぶ、ブームが去っても逆転できる店(後編)

アメリカ発の人気ドーナツ店「クリスピー・クリーム・ドーナツ」による逆転劇をテーマに、コラムをお届けしています。

前回は「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が起こしたブームから、一気に危機的状況へと追い込まれた背景を紹介。

そこから起こした逆転劇について、商品開発というポイントからお伝えしました。
ただの流行ではなく、日本人の嗜好・ニーズに合ったドーナツを新発売することで、支持を集めたのです。

今回は、もう1つの逆転劇を取り上げます。
それは顧客による消費体験を満たす戦略です。

さらには飲食店経営に活かせるヒントがないか考察も行います。

顧客の利用シーンに合わせた店づくりへ

/wp/wp-content/uploads/2019/01/「クリスピー・クリーム・ドーナツ」から学ぶ、ブームが去っても逆転劇を果たす店づくりとは(後編)

「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が力を入れたことは、地域性・客層に合わせた店づくりです。

ビジネスマンの利用が多い都市部にはカウンター中心の1名席を設置。
ファミリー層が集まる郊外にはベビーカーの導線を貼り、家族で楽しめるソファー席やキッズスペースを作りました

同時に効率化も図ります。1名で来店した顧客が、1つの椅子に荷物を置いて2名席を利用していました。そこで2名席を20%減少させて、1名席を増加。

2名席を1名席に変えたことで、スペースにゆとりも出来ました。1名客のユーザビリティが上がり、売上も10%アップしたのです。

結果的に「クリスピー・クリーム・ドーナツ」では席数が減っても、イートインの客数が増えるという現象が起こりました。

ファストフード店にあるような一辺倒なデザインではなく、顧客の利用シーンに応じた内装・レイアウトが評価されたのです。

またミニクルーラーや日持ちのするラスクを開発して、テイクアウト専門店やホールセールも本格的にスタート。既存の業態にとらわれない販売戦略にも挑んで行きます。

さらに甘さをメインにしたメニューだけでなく、食事系のメニューも投入しました。有楽町イトシア店と渋谷シネタワー店の事例を見てみましょう。
「ふわっととろけるドーナツに野菜やベーコンをトッピングしてデリ仕立てにした『ドーナツ キッシュ』」や、「朝食メニューとしてアメリカではなじみ深い「甘い」×「しょっぱい」のハーモニーが新鮮な『メープルベーコン』と、シンプルなドーナツにカリッと香ばしいベーコン、目玉焼きをサンドした『ドーナツバーガー』がモーニング限定セットとして登場」⁽¹⁾しました。

このようにして「クリスピー・クリーム・ドーナツ」は危機的状況に陥った2014年から、わずか1年で逆転劇を果たすことになります。

この現象をどのように読み解けばいいのでしょうか。
また飲食店経営に活かせるヒントはあるのでしょうか。

マーケットを乗り換えるという発想

/wp/wp-content/uploads/2019/01/「クリスピー・クリーム・ドーナツ」から学ぶ、ブームが去っても逆転劇を果たす店づくりとは(後編)

筆者の見方では「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の逆転劇は、ブームを起こした企業が再生を果たすだけのストーリーではありません。

なぜなら日本におけるドーナツ市場は低迷の一途を辿っているからです。

現在ドーナツ市場を牽引するのは、業界トップの「ミスタードーナツ」。
株式会社ダスキンが手がける飲食事業の1つです。

「ミスタードーナツ」が属する同社フードグループの売上⁽²⁾を見ると、2018年3月期は376億円を記録しています。なお2015年3月期の業績は482億円でした。3年間で100億円もの売上を減少させていることがわかります。

さらに2018年3月末時点で、国内稼働店舗数は1086店。
1年前と比べて74店、5年前と比べると262店も閉鎖させています。

業界2位の「クリスピー・クリーム・ドーナツ」で47店舗、3位の「はらドーナツ」で20店舗ということもあり、ドーナツ市場は「ミスタードーナツ」がほぼ独占していることがわかります。

「ミスタードーナツ」が低迷している、またはコンビニエンスストアによるドーナツ戦争も不発に終わっていることから、ドーナツ市場は決して有利な状況とは言えません。

このような苦境において「クリスピー・クリーム・ドーナツ」は復活劇を果たしたのです。
なぜマーケットは不利な中で、一人勝ちに成功したのか。

筆者の見解では、ドーナツ市場の顧客をターゲットにしなかったからだと考えています。
つまりドーナツ市場で戦わなかったということです。

では、どの市場を攻めたのか。
カフェ市場です。

コラムで取り上げたように新商品の開発や店舗づくりは、カフェとして利用する顧客から支持される内容です。なぜなら、スピード感よりも、くつろぎや居心地が重点に置かれた改革が実施されたからです。

「クリスピー・クリーム・ドーナツ」はドーナツ店という形態を取りながらも、カフェづかい出来るお店として顧客に利用されるようになって行きました。

帝国データバンクの「喫茶店・カフェ経営業者 1180 社の経営実態調査」によれば、「喫茶店・カフェ経営業者1180社の2017年の売上高合計は、前年比4.6%増の6415億3200万円となり、拡大傾向が続いている」⁽³⁾ことが発表されています。

つまり「クリスピー・クリーム・ドーナツ」は、拡大するマーケットに上手く乗ったことで、復活劇を見事に遂げたのではないでしょうか。

商品は変えずに、戦うマーケットを変える
これは飲食店経営に活かせるノウハウです。

筆者が取材をした飲食店でも、この方法で成功したスタンド焼肉店があります。
京都市内にある焼肉店ですが、既存の焼肉ファンをターゲットにはしていません。

ちょい飲みファンをターゲットにして、圧倒的な支持を集めたのです。
ガッツリと焼肉を食べたい顧客ではなく、上質な焼肉を少しつまんで、お酒を楽しめるお店。

同じような焼肉店は周辺エリアには存在しなかったため人気を博しました。

さいごに

この戦略はとても効果的です。
売上が低迷しても顧客が離れても、復活劇はいくらでも果たせます。
ぜひ活用してみて下さい。

【参考文献・リンク】
⁽¹⁾クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社
https://krispykreme.jp/pr/pr180314.html
⁽²⁾セグメント別売上高・営業利益|株式会社ダスキン
https://www.duskin.co.jp/ir/library/segment/segment_01.html
⁽³⁾喫茶店・カフェ経営業者 1180 社の経営実態調査|帝国データバンク
http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0486910_01.pdf
※↑リンク先がpdfデータとなります。通信容量にご注意ください。

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