入ったばかりのスタッフが、すぐに辞めない採用戦術とは
このような好条件を提示する目的は、求職者からの応募率を上げるためです。
最近では人材不足という深刻な問題に対応すべく、労働条件を緩和したり優遇したりするケースも少なくありません。
しかしながら、これが新たな問題を生み出しています。
上手く採用に成功をしても、すぐに辞めてしまうスタッフが後を絶たないのです。
いわゆる離職率問題。
これが今回のコラムで取り上げたいテーマです。
どのようにすれば解消できるのかを、実例とともに探っていきます。
なぜ好条件で採用したスタッフはすぐに辞めるのか
飲食業界自体、もともと人材の入れ替わりが激しい業界ではあります。
しかし今では好条件での募集が、さらに拍車をかけて流動性を高めています。
「茶髪・ピアス自由」「履歴書不要」「時給1200円以上」。
なぜライフスタイル重視・高待遇での応募は、人材が集まりやすい一方で離れやすくなるのでしょうか。
理由は、“楽して働ける”というイメージを求職者に与えてしまうためです。
もちろん、すべての求職者に当てはまることではありません。
しかしながら、場合によっては「準備をせずに応募出来て、好きなファッションで高い給与が得られる仕事」という印象を抱かれてしまいます。
では、実際の労働環境はどうでしょうか。
高時給に見合うだけの働きや努力が求められるので、決して楽はできません。
私見ではありますが、「○○できそうイメージで志望した人は、○○できないという理由で辞める」という仮説を立てています。
例えば、「楽できそうという動機で志望した人は、楽できないという理由で辞める」。
すなわちイメージと現実のギャップに耐えかねて、離職してしまうということです。
一方で定着率を高くするためには、この仮説を逆利用することもできます。
それはイメージとのギャップをなくした上で、採用をする方法です。
この方法であれば、理論上は長期雇用を実現することができます。
筆者がインタビューをした飲食店で、実践をしている店舗があるので事例を見ていきましょう。
スタッフが辞めないステーキ店の採用術
驚かされたのが、離職率の低さ。
具体的な数値を算出しているわけではありませんが、学生スタッフは学校を卒業をするまで辞めないとのこと。
また正社員は、独立以外の理由で辞めたスタッフはいないようです。
卒業・独立をしても多忙時は手伝ってくれるという、そもそも辞めるという発想がない職場。
さらには、髪型・ピアス・服装も自由なのです。
金髪で派手な見た目のスタッフもいますが、中核的な存在として活躍しています。
アルバイトの時給も、近隣エリアで見れば好条件。
1200円を超えているスタッフも中にはます。
長期的な雇用に成功している理由として、面接方法にコツがあるようです。
「金髪でもピアスでも構いません。でも、それがどういうことか理解してもらった上で、採用をしてます。普通の子とは見た目、違いますよね。一般的には、マイナスイメージを与えます。チャラチャラしてれば、お客さんが不快感を抱く可能性もあります。結果的には、お店のイメージダウンにもつながりかねません。だからマイナスからのスタート。マイナスからのスタートではない、ユルい職場だと思われて採用すれば失敗します。」
お客様の印象よりも、自分の個性や主張を優先させることのデメリットについて、きちんと面接で説明をするというオーナーシェフ。
さらに面接時にもっとも大切にしているポイントを教えてくださいました。
「マイナスからのスタートであることを理解してもらえたら、あとはやる気を確認します。プラスに変えていく努力は、自分次第であるということです。ここが重要です。お客さんから気に入られるような接客をするか、誰よりもこなせる業務量を増やせるか、つまり頑張る気があるかどうか。これが出来ない方はうちのお店には合っていません。逆に、それでも頑張っていきたい、という方はかなり活躍してくれます。マイナスを一切感じさせない仕事をしてくれれば、給与でしっかりと評価をさせてもらえます。」
オーナーシェフの話をまとめると、面接のポイントは2つ。
1つは、お店の考え(ファッションは自由だが、マイナススタートである)を説明。そして応募者に理解してもらう。
2つは、お店の評価体制(マイナスをプラスにする努力が出来れば、給与に反映)を説明。そして応募者の意思を確認する。
このやり方であれば、楽できそうというイメージを面接時にしっかりと払拭をして、かつ求職者のやる気を確かめてふるいにかけることが可能です。
また理解の行き違い、認識の不一致もなくなるでしょう。
結果的に、長期的な雇用に成功しているのです。
さいごに
「スタッフがすぐに辞めてしまう」という問題を作り出しているのは、求職者だけではなく、飲食店にも因果があるということです。
応募数を増やすために、条件緩和をしようと決めているのは雇用者側。楽できそうな職場と思わせてしまう隙を与えてしまう可能性があります。
むしろこの機会を活用して、求職者のやる気を引き出す面接方法を試されてみてはいかがでしょうか。