
日本食として、外国人から人気を集めるラーメン。
訪日外国人から高い評価を獲得するラーメン店も増えてきました。
街中を歩いているとラーメン店の前で、外国人客の行列をよく目にすることがあります。
今シリーズでは、なぜ、あの人気ラーメン店には外国人客の行列ができるのか、という問題をテーマに記事をお届けしています。
とくにインバウンド対策をしたい飲食店が、訪日外国人を集客するうえで押さえておくべきポイントを3つにまとめました。
前編のまとめ

前編では、日本食として外国人から高評価を受けているラーメン店ですが、人気に差が生じる理由がどこにあるのかを説明しました。
『なぜ外国人の行列が絶えない?人気ラーメン店の理由を探る①』
ポイントは訪日外国人が、どのお店に足を運ぶかは、事前の情報収集で決まっているということです。
コラムにおいて重視したのは、SNSの活用。インフルエンサーや人気ブロガー、YouTuberによって投稿されたコンテンツが、外国人たちの情報収集源となっています。
つまりSNSにアップ・シェアされやすい飲食店が、訪日外国人から人気を集めているということです。ラーメン店で言えば、どんなラーメン店が投稿されやすいのかを、考えなければなりません。
後編では、急速にユーザーを増やしているYouTubeに注目します。YouTube上で日本食が紹介されて、多くの視聴回数・高評価を集めている事例は、枚挙にいとまがありません。
例えば、John Daub氏が手がける「ONLY in JAPAN」は、1,171,448人(2019年8月5日時点)の登録者数を誇る人気チャンネルです。18年以上日本に在住する経験を活かして、日本中のグルメ・ホテル・観光スポットに関する動画を公開しています。
ラーメン店で再生回数を集めているのが、札幌ラーメンに関する動画です。元祖さっぽろラーメン横丁で食べ歩きをする様子を流しており、150万回以上の再生回数を誇っています。
ただのグルメレポートだけではなく、なぜ札幌は味噌ラーメンなのか、という疑問まで追究しており、日本人にとっても見ごたえのあるコンテンツとなっています。
動画だからこそ伝えられる情報が凝縮されたYouTube。どんなラーメン店が、YouTube動画に投稿されているのか分析していきます。
YouTubeでの紹介事例

ここでは人気YouTuberから紹介されているラーメン店として『一蘭』(https://ichiran.com/)を取り上げます。
『一蘭』とは言わずと知れた天然とんこつラーメン店で、日本全国、そしてグローバル規模で展開しているチェーン店です。
国内外問わずYouTubeをはじめSNSやブログで、『一蘭』のラーメンが日々アップされている様子を目にします。
とくにYouTuberによる動画で、再生回数の多い映像を3つ紹介します。
①Strictly Dumpling
(視聴回数:7,493,217)*2019年8月5日時点
→Strictly Dumplingについて:登録者数260万人以上。食べることをこよなく愛するMike Chen氏によるYouTubeチャンネルです。日本はもちろんインド、韓国、ベトナム、中国、台湾、カナダなど世界中をグルメ旅の様子を公開しています。
②KAYCEE & RACHEL in WONDERLAND FAMILY
(視聴回数:5,638,512 )*2019年8月5日時点
→KAYCEE & RACHEL in WONDERLAND FAMILYについて:登録者数190万人以上。姉妹を中心に一家で、日常や遊び、旅行全般をテーマにした動画を公開しています。とくに日本好きであることを公言しており、東京へ訪れた際に『一蘭』を訪れて、動画をアップしています。
③Travel Thirsty
(視聴回数:4,791,211 )*2019年8月5日時点
→Travel Thirstyについて:登録者数390万人以上。日本を中心に世界中のグルメ事情に特化して紹介しています。特徴は、サメやヘビなどの珍しい食材を捌くところを撮影したり、屋台フードとして紹介したりしている点です。コアな映像が人気を集めています。
どの動画も入店をする場面から注文方法、会計、そして食事シーンまで丁寧にわかりやすく紹介・解説されています。
『一蘭』の動画コンテンツから、どのようなポイント・シーンがYouTuberによって重視されているのか、まとめてみました。
①オーダーがしやすい

外国人にとってオーダーしやすいシステムが整えられていることが必須条件です。
注文票・券売機が英語表記であることはもちろん、どのような手順でオーダーをすれば良いのか、わかりやすさが問われています。最近では、中国語・韓国語のメニュー表や発券機を設置する飲食店も少なくありません。
日本人にとっては当たり前でも、外国人には不慣れで、常識でもありません。どんなメニューがあるのか、どのように注文すれば良いのか、わかりやすく説明する必要があるでしょう。
一見、手間のように思えます。しかし、このようなシステムがなければ、外国人からの質問を受けて、スタッフによる説明の手間が増えることになります。
例えば「Bakaito」というYouTubeチャンネルで、フランス人が『一蘭』の券売機を使用する様子を映しています。
1つ1つの商品ボタンに、日本語・英語・韓国語・中国語でメニュー名が表記されており、さらに写真も添付されています。食券を購入する手順も番号をふって、写真付きで説明されています。
はじめての来店でも、外国人が不安なく飲食体験をできるようにオーダーの流れをシステム化していることが、これからのラーメン店には問われるでしょう。
「食ジョブコラム~食✕職~」の運営元である株式会社PPRでも、外国語メニュー(https://www.ppr-do.co.jp/other/)の作成をサポートしています。外国人向けのメニュー制作についてお困りであれば、お気軽にお問い合わせください。
②選ぶ楽しさがある

ただラーメンを食べるだけではなく、人気ラーメンには、何かしらの楽しさが用意されています。1つがメニューを選ぶ楽しさです。
『一蘭』の場合、ラーメンの種類は1つだけですが、トッピングやサイドメニューを選べる点が外国人から評価を得ています。
メニューには追加チャーシューやにんにく、ねぎ、半熟塩ゆでたまご、きくらげ、のり(2枚)、煮込み焼豚皿、オスカランの酸味、替え玉、ご飯、抹茶杏仁豆腐などがあります。
また味の濃さ(薄味か濃い目か)、こってり感(こってりかアッサリか)、にんにくの量などを指定することが可能です。
顧客が自分好みのラーメンやセットを完成させる楽しみがあります。YouTubeでも、どのトッピングを追加するか、どういった味を完成させるかも1つの魅力として紹介されています。
『一蘭』以外にも、このような事例は枚挙にいとまがありません。『無敵家』(http://www.mutekiya.com/)を見てみましょう。
『無敵家』は、世界的な旅行サイト「トリップアドバイザー」の 2018年エクセレンス認証レストラン部門で、4.5評価の「東京豊島区第一位」を5年連続で受賞したラーメン店です。
肉玉麺や本丸麺、ちゃうしゅう麺、特丸麺本トロなメインのラーメンを筆頭に、多彩なラーメン、つけ麵、トッピングが用意されています。もちろん、すべて外国語表記のメニューがあります。
トッピングによって自分好みのラーメンを仕上げる楽しさは、ただ食べるだけではなく、一種のエンタテインメント体験ではないかと筆者は考えています。
最近では、ラーメンを食べるだけではなく、エンタテインメント性のあるラーメン店も注目を集めています。
例えば京都上京区にある『めん馬鹿一代』です。『めん馬鹿一代』の看板メニューは、ネギラーメン。このネギラーメンは、ただのネギラーメンではありません。
カウンター席のみで提供される噂のラーメンです。高温の油をラーメンに注いだ瞬間、大きな火柱が立ちます。
お店が公開している動画をご覧ください。
このパフォーマンスが外国人から高い評価を集めています。重要なのはトッピングを選ぶことや、独自のパフォーマンスを通して、外国人客に楽しんでもらうことです。
ラーメンを食べるためにかかる時間は、決して長くありません。いわゆるファストフードの1つです。しかし訪日外国人にとっては、日本での希少な経験となります。
どうすれば、ラーメンの味だけではなく、お店での体験を満喫してもらうのか、さらにYouTubeやSNSに投稿したいと思ってもらえるのかという発想で、アイデアを出してみてはいかがでしょうか。
③決済のしやすさ

3つ目は、これからの動向を踏まえて、押さえておくべきポイントをお伝えします。
それは決済のしやすさです。発券機が外国語表記されて、手順がわかりやすいことは、すでに述べました。
日本では、現金での支払いが一般的ですが、世界的にはキャッシュレス化が加速しています。
経済産業省の調査⁽¹⁾からひも解いてみましょう。2016年の時点で韓国では96.4%、イギリスでは68.7%、オーストラリアでは59.1%というキャッシュレス比率に対して、日本では19.8%という結果になっています。
現金志向が根強い日本ですが、訪日外国人の増加に伴って、さらに今後キャッシュレス化が進むことでしょう。
ラーメン店でも決済・会計のキャッシュレス対応が求められています。
中華そばで有名な『あの小宮』では、「0:der」(https://www.oderapp.jp/)というシステムを導入されました。
「0:der」は、注文から決済までがスマートフォンで完結できるモバイルオーダー&ペイプラットホームです。アプリ内に登録しているクレジットカードで、注文・決済ができるので、顧客はわざわざ券売機に並ぶ必要がありません。
キャッシュレス化によって、お店側はオペレーションの効率性が飛躍的にアップします。顧客もわざわざ券売機で現金払いする必要がなく、スムーズに食事をすることが可能です。
また長崎ちゃんぽんで有名な『リンガーハット』では、フードコートを対象としたセルフ注文端末を導入したり、ラーメン店向けタブレット式券売機「e-menu Ticket」(https://ticket.transit-emenu.com/)がリリースされたりと、新しい動きが起きています。
スマホ決済や電子マネー決済、さらに今後は仮想通貨による決済が浸透していく可能性もあるでしょう。時代の流れ、そしてニーズに乗り遅れないことが、外国人客の心を掴むためには欠かせません。
さいごに

YouTuberやインフルエンサーに動画を投稿してもらうために、窓口を設けるのも1つです。ラーメン店ではありませんが、一例を紹介します。
カッパ・クリエイトが運営する寿司チェーン店『かっぱ寿司』では、「メディア取材に関するお問い合わせ」からYouTuber(VTuber含む)専用の取材問い合わせフォーム(https://www.kappa-create.co.jp/contact_form/)を開設しています。
対象はチャンネル登録者数10万人以上のYouTuberまたはVTuber。企画概要は、専門フォームから問い合わせをして、動画を投稿したYouTuber限定で、飲食サービスが無償になるという内容です。
大切なことは、訪日外国人がYouTubeやSNS、ブログで飲食店の情報収集をしており、その対策を行うことです。
どうすれば外国人客や海外のインフルエンサーが紹介したくなるかを考えるきっかけして頂ければ幸いです。
参考文献・サイト
⁽¹⁾経済産業省|キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoryu/credit_carddata/pdf/009_03_00.pdf
外国人をターゲットに集客力を上げるためのコラム一覧
『なぜ、あの飲食店は中国人観光客(訪日外国人)といい関係を築くことができるのか』<1>
https://colum.shokujob.com/human_resources/2018/06/3072/
『なぜ、あの飲食店は中国人観光客(訪日外国人)といい関係を築くことができるのか』<2>
https://colum.shokujob.com/human_resources/2018/06/3078/
『いつも外国人観光客で賑わっているレストランは○○を活用していた』<前編>
https://colum.shokujob.com/store_operation/2018/07/3398/
『いつも外国人観光客で賑わっているレストランは○○を活用していた』<中編>
https://colum.shokujob.com/store_operation/2018/07/3400/
『いつも外国人観光客で賑わっているレストランは○○を活用していた』<後編>
https://colum.shokujob.com/store_operation/2018/07/3402/
『なぜ外国人の行列が絶えない?人気ラーメン店の理由を探る①』
https://colum.shokujob.com/news/2019/08/7522/