地域に愛される老舗寿司グループの想いと人材育成とは|株式会社 音羽
小学生で寿司職人を志し、経営者となった田舞専務の想い。創業の想いや人材育成の工夫、従業員への感謝を語るスペシャルインタビュー
株式会社 音羽 専務取締役 田舞 真志(たまい しんじ)
Q:田舞専務、今日はよろしくお願いします。まず最初に株式会社音羽の事業内容から聞かせて頂けますでしょうか?
私たちは地域に根付いたお客様の様々な利用シーンに対応するため、お寿司を中心とした割烹レストラン、江戸前回転寿司、宿泊機能付きレストラン、ブライダル事業など、多くの業種を展開しています。
Q:音羽さんはお客さまの重要な節目と共に成長されてきたんですね。ありがとうございます。田舞専務はどのような経緯で音羽さんに携われるようになられたのでしょうか?
私は小学校2年生のころにはすし職人になろうと決めていました。音羽を創業した父が休日に連れて行ってくれた寿司屋の大将に憧れていたからです。ですので、高校には行かずにすぐ職人を目指そうとしましたが、父から「高校だけは出ておけ」と言われ、進学しました。卒業後は職人になりたい一心でとあるお寿司のチェーン店で3年間修行をします。そして、経営の勉強もすべく、とある教育機関のカリキュラムを受けることになり、そこで音羽への入社を決断したんですよね。

Q:どのような出来事があって、入社を決断されたのでしょうか?
そのカリキュラムに参加されていた方々が後継者問題に悩んでいる方が多かったからなんです。そんな悩みを聞いているうちに、ふと「父も同じように後継者問題で悩んでいるのではないか?」と思ったんですよね。そう思ったら、いてもたってもいられず、父とその問題について向き合ってみたんです。そうしたら父と共同で創業した叔父の息子さんと一緒に、音羽を盛り上げていって欲しい、と言われたんです。それが音羽に携わるキッカケとなりました。
Q:そのような経緯があったんですね。その後、専務取締役としてご活躍される田舞さんですが、お仕事をされる上で大切にされている考え方などがあれば、お聞かせください。
現場で働く従業員さんにフォーカスが当たるようにしています。なぜかといいますと、半世紀以上にわたり音羽がお客様のために尽くしてこれたのは、従業員さんの頑張りがあったからです。だからこそ、僕たち経営陣がフォーカスされてはいけないと考えています。その考え方を大切にして、お仕事をさせていただいております。

Q:半世紀に渡り、お客さまのために尽くし、音羽を支えてきた従業員のみなさんへはどんな想いをお持ちでしょうか?
感謝のひと言ですね。音羽は幼少期のころから身近な存在で、従業員さんから料理への情熱が子供ながらにも伝わってきました。そして、今もなお、当時の従業員さんが音羽のために頑張ってくれています。もちろん、その従業員さんにも家族がいます。それでも彼らは家族を顧みず、音羽に訪れるお客さまのために尽くしてくれています。その姿勢に感謝していますね。
Q:従業員さんあっての御社なんですね。ありがとうございます。さて、この辺りから読者さんが気になってそうなことを聞いていきますね!まず、入社後にはどのような活動を行うのでしょうか?
入社式が終わるとすぐに、一週間程度の合宿を行います。学生から社会人になる心構えやマナー、現場配属にあたっての心構えなどを学んでいただきます。その合宿が終わると5か月間のローリング研修に入ります。ローリング研修とは5か月間にわたって4、5店舗、異なる業態のお店に異動し、経験を積んでもらうことを目的としています。こうすることで新入社員の方が「このお店での業務は自分には合わなかったけど、こちらのお店ならいけそうだな」と感じてもらえることが増えました。また、お店側も新入社員の適性を判断できる、という副次的な効果もありますね。
Q:なるほど。ローリング研修を行うことで、入社前後のギャップを最小限に抑えることができるのですね。中長期的にはいかがでしょうか?
ローリング研修が終わってからの最初の2年間は、月1回の集合研修を行うようにしています。そこでの研修は入社後の合宿とは異なり、自社農園での食材に関する研修や、茶室でお茶に関する研修なども行います。そして、そこから先は与えられる研修から、自ら学んでいく段階に入ります。調理を勉強したい方は調理を、マネジメントを勉強したい方はマネジメントを学んでいただく。そんな具合ですね。キャリアアップに関しては、音羽は家族経営のイメージがあり、あまり昇進できないのではないか?と思われるかも分かりませんが、そんなことはありません。幹部はみんな現場を渡り歩いてきた人間ばかりですよ!

Q:ありがとうございます。ここで音羽の他社にはない強みをお聞かせください。
圧倒的な機動力です。実際にあったことなのですが1500個の仕出し注文が突如、入ったときがありました。仕出しだけが仕事ではないですから、本来であればもう大慌てです。そんなときには幹部が割烹着を着て、颯爽と現場へ急行するんです。しかも嬉しそうに。ルンルンで現場に向かうんですね。これが音羽の強みです。音羽イズムです。何か問題が発生すると、その問題に対して、役職関係なく全員で対処できる機動力があります。この圧倒的な起動力が当たり前の文化として根付いているんですよね。
Q:まさに一致団結ですね!でも、なんでそこまで頑張れるのでしょうか?そこまで動くことの出来る飲食業にどんな魅力があるのでしょうか?
直接、お客さまに「ありがとう」とおっしゃっていただけること。それに尽きると思います。世の中にはさまざまサービスがありますが、商品を提供してすぐに「ありがとう」とおっしゃていただけるサービスってあまりないんですよね。飲食業の場合、それがタイムリーにいただける。そしてその「ありがとう」といただくために私たちは試行錯誤するわけです。お客さまに「ありがとう」とおっしゃっていただけると思わずガッツポーズしてしまいますよね!
Q:ガッツポーズ!いいですね!最後に読者の皆さまへメッセージをお願いします。
食は人が生きていく上で欠かせない要素です。私たちは、単にお腹を満たすだけではなく、お客さまの心にも豊かさを提供したいと考えています。その思いに共感していただける方とは、ぜひ一緒に飲食業界で、共に頑張っていきたいと思います。
株式会社音羽 人財開発部 部長 敷根政彦(しきねまさひこ)

Q:続いて人財開発部部長の敷根さん、よろしくお願いします。まず最初に敷根さんのお仕事内容からお聞かせください。
人財開発部の部長として、従業員さんの調理技術の向上に携わらせていただいております。また調理技術だけではなく接客技術も向上させよう!ということで各種コンテストを企画して開催したり、調理マニュアルの作成なども担当しております。
Q:敷根さんは縁の下の力持ちなわけですね!敷根さんはどのような経緯で入社されたのでしょうか?
父が日曜大工が好きで、その影響なのか、僕はモノを作ることが大好きな子供でした。そして将来の夢は大工さんになることで、高校にはいかず近所の大工屋さんで働こうと思っていたんです。しかし、当時はまだ体が小さくて働くことができなかったんですよ。その後、音羽の創業者と縁があってお世話になることにしたんです。
Q:ありがとうございます。お寿司を握ることも「モノ作り」という観点からいくと、共通するものがあったんじゃないでしょうか?
そうですね。やってみるとこれが楽しいんですよ。出来なかったことがどんどん出来るようになって、そこにやりがいを感じましたね。それも音羽の先輩たちのお陰だと思っています。当時の労働環境は厳しいものがありました。「見て覚えろ!」「あれやれ!これやれ!」そんな具合です。でも、そんな環境でも先輩たちは見捨てずに、親身になってくれたんですよね。厳しいんですが陰では僕の成長を応援してくれていたんだと思います。そういう意味では恵まれた環境でした。
Q:そんな恵まれた環境を作ってくれた音羽にはどんな想いをお持ちでしょうか?
僕がこの立場でお仕事をさせていただいているのも音羽の先輩たちのお陰です。ですので昔、僕が先輩たちにしてもらったように、音羽で頑張る後輩たちにも同じように愛情をもって接していこうと思っています。そんな想いでいますね。

Q:ありがとうございます。でも昔ながらのやり方ですと、愛情をそれと感じないような時代になってきています。その辺りはどうお考えでしょうか?
おっしゃる通りですね。ですので「こうしろ!」「あーしろ!」と指示だけするのではなく、なぜそれをやらなければいけないのか?といった理由や根拠を添えて伝えるようにしています。更にはその理由や根拠のルーツやエピソードなんかも添え、後輩たちの好奇心をくすぐるようにして伝えるようにしていますね。
Q:さすが縁の下の力持ちですね!インタビューも後半に差し掛かりますが、敷根さんの思う飲食業の素晴らしさを読者の方にお伝えください。
自分たちのやってきたことで、お客さまの心が動かせることだと思っています。人生において心が動かされるときはたくさんあると思うんですね。料理は、その心を動かせる一つの手段だと思っています。なので大前提として、その料理を作る職人も人の心が動かせる人でなければいけない。そのためにはまず、人として当たり前のことを当たり前にする。しっかりと挨拶をする。身だしなみを整える。それができなければ心を動かせる料理は作れないと思っています。
Q:その通りですね!最後に読者の皆さまへメッセージをお願い致します。
しんどい仕事ですが、とてもやりがいのある仕事です。なぜなら、人を幸せに、そして笑顔にできる仕事だからです。一緒にお客さまを幸せにしていきましょう。
