スキマ市場に挑み続ける。数字と情で成長する飲食企業の20年|ディーライブ株式会社

投稿日:2025年9月16日(火) 社長インタビュー

京橋を拠点に10店舗を展開するディーライブ。音楽×食の「ベロニカ」や燻製・薬膳業態など、大手が扱わないテーマに取り組む姿勢の根底にあるのは“人の力になりたい”という信念。代表・伊藤浅己の軌跡に迫る。

ディーライブ株式会社 代表取締役 伊藤浅己(いとうあさみ)

Q:伊藤社長、今日はよろしくお願いします。まず最初にディーライブ株式会社の事業内容から聞かせて頂けますでしょうか?

2005年10月に創業し、現在は音楽やダンス、各種ショーなどをお酒とともにお楽しみいただけるベロニカと、大手企業がやらないような燻製や薬膳をメインにしたお店など、より専門性の高い業態を9店舗で計10店舗を運営しております。京橋を中心に展開し、おかげさまで今年で20周年を迎える会社です。

Q:20周年、おめでとうございます!伊藤さんは飲食業界に飛び込まれる前はHPなどのデザイン系のお仕事をされていたと伺っております。どのような経緯で飲食業をされるようになられたのでしょうか?

僕は高校卒業後、地元の愛媛県で化学系の会社で9年ほど分析官をしていました。その後、大阪でコンピューター関連の仕事を弟と一緒にするのですが、なかなかうまくいかず、仕事を求めて神奈川県に移り住んだんですね。ここでは他のウェブデザイナーでは手に負えなかったHP作成を専門で扱うようになり、それが評価されたのか、とある大手の広告会社からHPの作成を引き受けることになったんです。向こう1年間の仕事が埋まり、事業も軌道に乗りました。そんなとき、大阪の知り合いから音楽と食事を同時に楽しめるフラミンゴというお店のデザインをしてくれないか?と相談があったんですね。そこからは東京と大阪とで半々の生活を送るようになったのですが、弟を含めたスタッフから「うまくいってるのになぜ、そんな仕事を受けるんだ!」なんていう不満が出るようになったんです。でも僕は、自分を頼ってきてくれた人の力にどうしてもなりたかった。なので、東京での仕事にケリをつけ、再び大阪でフラミンゴの仕事を手伝うようになりました。そして、のちに鉄道会社が仕掛けたベロニカの経営を引き継ぎ、徐々に飲食の道に進むようになっていったんです。

Q:ありがとうございます。創業20周年ということで「こんなことを大切にしてきたから今がある」そういった信念みたいなものがあればお聞かせください。

今こうして振り返ると、「人の力になりたい」という想いがあったからだと思います。弟と大阪で仕事をしていたときも、大阪に戻り手掛けた仕事も、僕を頼ってきてくれた人の力になりたかったからやった仕事なんですよね。ベロニカの事業を引き継いだときもそうでした。事業がうまくいっていなくて、でも働くスタッフの生活を守らないといけない。だからこそ始めた飲食業でもありました。そして、こうして20周年を迎えた今、これまで関わった方々に恩返しをするために働く環境を整えることが僕の役割の一つだと考えております。

Q:四半世紀近く共にされた従業員さんへはどんな想いをお持ちでしょうか?

ゴマンとある会社の中からディーライブを選んでくれてありがとう、という気持ちでいっぱいです。人と人が出会う確率ってもの凄い確率なわけですよね。そんな中で何かの縁で出会い仕事をすることになったのであれば、一緒になって素晴らしいものを作りあげていきたい、と思っております。

Q:ディーライブさんは今も昔もこれからも、従業員さんと共に成長されていくわけですね。さて、この辺りから、読者の方が気になりそうなことを伺っていきますよ!多業態で店舗展開されていく御社ではどんなことが求められるのでしょうか?

まず面接の段階で、うちの会社でどんなことがしたいのか?を聞かせてもらっています。うちは大手がやらないようなスキマにビジネスチャンスを見出す会社で、そこで結果を出すことが求められます。つまり、一つのお店を運営していけるだけの経営感覚が求められます。原価率はどうなっているのか。客単価はどうなっているのか。広告やSNSの運用はどうしていくのか。果たして、そのお店の利益は伸ばしていけるのか?そういった商売感覚を身に付けていくことが求められていく、ということですね。

Q:具体的にはどのようにして商売感覚を身に付けていくのでしょうか?

まずは経営指標を見える化しております。PLと呼ばれる売上から原価を差し引いた営業利益や、FLコスト率といって食材費と人件費が売上の何%を占めるのか、といった経営指標を全体に開示しております。そして、その数字を元に経営判断を下していきます。先日もとあるお店で、若い女性店長目当てで来られるお客さまが多く、客数自体は順調に伸びているお店がありました。しかし、店長目当てで来られているので、お酒やフードをさほど頼まれない傾向にあったんですね。つまり、客単価が伸びなかったんです。結果、このお店は別の業態に変更することになりましたが、このように表面的な感覚ではなく、すべてを数字で捉えることが大切だと思っております。

Q:なるほど。数字はウソをつかない、なんていいますよね。

そうですね。でも僕の悪いクセでもあるんですが、数字だ!なんて言いながら、ついついお店に情が入ってしまうんですね。HPのデザインをしていたからか、クリエイティブなお店を作ろう!と思ってお店作りに愛情を込めてしまうんです。だから潰したくない!数字だけみれば撤退なのになんとか再生する道はないか?なんて思ってしまうんですよ。でも、ディーライブは常にスキマを見つけて、それを形にすることができる会社です。数字をみて、もう続けることができない!と思ったらスパッと業態を変えて、また新たにクリエイティブなお店を作っていくことができます。それがディーライブの強みですね。

Q:ありがとうございます。伊藤さんの想う飲食業の素晴らしさとはどのようなものなのでしょうか?

衣食住なんていわれて久しいですが、その3つの中でも食は命に直結するものです。なので絶対になくなることがありません。そんな食ですが家で食事をする人、自炊をされる人、外にご飯を食べにいく人といるわけですが、その外に食べにいく人を楽しませることができます。外にご飯を食べにいく人がいる限りなくならないですよね。むしろ進化していくと思います。なぜかというと、この仕事はAIにはできないからです。笑顔で真心を込めて料理を運ぶことはできないですよね。DX化は進んでもAIにはとって代わられない進化を遂げていく素晴らしいお仕事だと思います。

Q:最後になりますが、読者の皆さまへメッセージをお願いします。

日本の食文化を盛り上げていってほしいと思います。お寿司やらーめんは世界でも評価されていますが、他にももっと評価されるべき日本の食文化があります。これをチャンスと捉え、頑張っていただきたいなと思います。