「好きな仕事を、好きなままで。」“飲食人”のキャリアを支える会社|プルバンフードサービス株式会社

投稿日:2025年8月1日(金) 社長インタビュー

和牛ハンバーグの「津の田ミート」などを展開するプルバンフードサービス。飲食人のキャリアを段階的に支える仕組みと、人を尊重する組織づくりに迫る。

プルバンフードサービス株式会社 代表取締役社長 山本達也(やまもとたつや)

Q:山本社長、今日はよろしくお願いします。まず最初にプルバンフードサービス株式会社の事業内容から聞かせて頂けますでしょうか?

弊社は1999年6月に創業し、現在は和牛ハンバーグやステーキを中心に提供する「津の田ミート」を12店舗、カレー専門店の「津の田カレー」を4店舗、韓国料理を中心とした「ツノダシクタン」の2店舗展開しています。私たちは飲食店で活躍する人材を「飲食人」と定義し、その飲食人のセカンドキャリア・サードキャリアを支える取り組みとして、キッチンカーによる催事事業や、肉を一括で仕入れ、加工・精肉・各店舗への配送を行う自社工場の運営を行っています。さらにEC事業にも力を入れ、今後は農業への展開も視野に入れています。そうした取り組みを通じて、飲食人としてのファーストキャリアをファーストキャリアのまま終わらせない。そんなことにチャレンジしている会社です。

Q:ありがとうございます。山本さんはコロナ前の2019年にお父さまから事業を引き継がれ、代表取締役社長に就任されたと伺っております。どのような経緯だったのでしょうか?

入社してすぐ、父から「この先も事業として続けられる商品を作れ」と言われたのがキッカケでした。それまでの父は韓国料理を中心としたフードメインの業態を展開していて、お子さまからご年配の方まで幅広い層のお客さまに愛されたお店だったんです。そうした方々に受け入れていただけて、かつこれから先も長く続けられる商品は何か。そこから逆算してたどり着いたのがハンバーグでした。父の持っていた肉に関する知見と、僕自身がイタリアンで修行してきた経験やノウハウを掛け合わせて商品開発を進め、2010年に父が経営していた既存の1店舗をリニューアルして「津の田ミート」をスタートさせました。そして、試行錯誤の結果、5年をかけてようやく自信を持って提供できるレシピが完成したんです。見た目においしく、食べてみて美味しく。ここまでは当たり前ですが、そこに肉汁たっぷり!という魅力も加え、三拍子そろった自慢のハンバーグが完成したんです。その後は「津の田ミート」を軸に事業を展開し、父が定年を迎えるタイミングだったコロナ前に、正式に代表取締役社長に就任させていただきました。

Q:「津の田ミート」を看板ブランドへと育てられた山本さんですが、経営者として大切にされている考え方があればお聞かせください。

手広く広げない、ということです。広げる前にまずはお店自体をブラッシュアップし、どんどん良いお店にしていく。常に前年比アップを目標に掲げ、そうやって既存店を良くしていって次の店長候補が育ってから新しいお店を出していく。つまり、お店の拡大が先に来ないということです。僕が父からタスキを繋いだのと同じように、僕もいずれ誰かにタスキを繋いでいかなければいけません。そのためには「津の田ミート」というブランドももちろん大切ですが、それ以上に大切なのは、そこで働く人の成長です。だからこそ経営の軸を人に置くことを意識しています。

Q:具体的にはどのようなところを意識されているのでしょうか?

労働環境や福利厚生の充実はもちろんのこと、人を否定せず、リスペクトし合う文化を大切にしています。僕自身も、社員とは常にフラットな関係性でいることを意識していて、トップダウンではなく、社員一人ひとりの人間性を尊重することを心がけています。「こんなことやりたいんだけど、どう思う?」といった対話を通じて、目指す方向性を共有し、共感が生まれ、行動につながっていく。そうした日々の積み重ねが「人を大切にする」という考え方につながっていると感じています。

Q:相手を尊重する。人として当たり前のことを徹底されているからこそ、社員の皆さんが自ら動く文化が根付いているのかもしれませんね。さて、この辺りから読者の方々が気になりそうなことを伺っていきますよ!入社された方々がまず取り組まれることについてお聞かせください。

まずは2日ほどのオリエンテーションをします。いわゆる外部研修ですね。社会人とは?その辺りからまず学んでいただきます。次にプルバンフードサービスの歴史や大切にしている考え方などをお伝えします。その後に現場ですね。弊社ではファーストキャリアは店舗から、と決めていて、少し厳しいかも分かりませんが、そこにストレスを感じてしまうとセカンドキャリア、サードキャリアには進むことは難しいと考えています。まずはお店での料理やお客さまとの触れ合いを通じて、「お店で働くって楽しい!」と感じてもらうことが、飲食人としての土台になると考えているんです。

Q:中長期的にはいかがでしょうか?

まずは店長を目指していただきます。ですので、プルバンフードサービスでのファーストキャリアは店長ですね。とはいえ、「店長になりたい!」と思っても、当たり前ですがそのお店にはすでに現役の店長がいるわけですよね。ですので、そのタイミングが次の出店のタイミングでもあるんです。これが先ほどお話した「お店の拡大が先に来ない」という考え方につながっています。店長になりたい!というキャリアアップへの意欲があってはじめて、新しいお店を任せる形になるんです。ただし、プルバンフードサービスが考える「店長」は、単に料理ができるだけでは務まりません。もちろん料理の腕も大切ですが、それ以上にマネジメント力や、人を束ねるリーダーシップが求められます。店舗の規模に応じたバランス感覚を持ちながら、仲間同士で尊重し合い、店舗を一緒に育てていく。そしてその役割をしっかり全うすることが、私たちが考える店長像であり、ファーストキャリアの定義でもあるんです。とはいえ、予想以上にお店が繁盛し、新米店長のキャパシティを超えてしまうような場面もあります。そんなときは、僕を含めた本部がしっかりサポートに入りますのでご安心ください。

Q:それは心強いですね!その後、活躍された店長たちのセカンドキャリア、サードキャリアはどのようなものになるのでしょうか?

早ければ40代から。遅くとも50歳くらいからセカンドキャリアにステップアップしていきます。自社の精肉工場やキッチンカーによる催事への出店、そして農業への配置転換ですね。でも、ここでも考え方は一貫しております。精肉工場をどんどん大きくしようとか、催事出店をどんどん増やそう、農業で利益を上げようといった発想ではなく、あくまで「人」が先です。人材が社内に育ち、溢れてきたときに、その人たちの活躍の場として事業がある。そんなふうに考えているんです。

Q:少しむずかしい質問かもしれませんが、プルバンフードサービスとは、キャリアを重ねる社員の方々にとって、どんな会社なのでしょうか?

好きな仕事を好きなままでいられる。プルバンフードサービスはそんな会社だと自負しております。ファーストキャリアでは、「この町のハンバーグ屋さんといえば津の田ミート!」と言っていただけるような持続性のあるお店を作り上げ、結果としてこの仕事が好きになり、その想いを持ったまま次のキャリアを迎える。そして最後まで好きな仕事としてその役目を終えることができる。そんな会社でありたいと思っています。

Q:終盤です。山本さんの想う飲食業の素晴らしさをお聞かせください。

料理は不思議と、同じレシピでも同じ味にはなりません。料理が出来上がるまでの工程は誰にも縛ることができないからです。その料理人の腕次第!ってところですよね。とはいえ、お客さまが求めているのは、単に“美味しい”という一点だけではありません。私たちのお店に来てくださる方は、料理だけでなく、接客のやさしさや空間のあたたかさ、居心地の良さといった“食体験そのもの”を楽しみにされています。だからこそ、そのどの瞬間においてもストレスを感じさせないことが大切です。仮に何かがうまくいかなかったとしても、最後に提供する料理の美味しさで取り戻せることもある。そうやってトータルで満足を追求していくことが店長の役割でもあり、飲食という仕事の本質でもあると感じています。

Q:ありがとうございます。最後に読者の皆さまへメッセージをお願いします。

飲食業と一括りにされがちですが、その業態は多種多様です。ですので、ご自身は何がしたいのか。どんな料理を作りたいと思っているのか。その辺りの欲求を明確にして、その欲求を満たせる会社を選んでいただけたと思いますね。