“人の役に立つ”を商いに。食の仕事で未来を描く飲食企業|株式会社すぎうら

投稿日:2025年8月20日(水) 社長インタビュー

仕出し屋での修業を経て16歳で創業を志し、30年。10年スパンで事業を捉え、進化を続けてきた株式会社すぎうらは、料理・接客・経営のすべてを学べる環境を整え、次の10年に向けた事業承継にも本格的に着手。そのバトンは、すぎうらのマインドを大切にしてくれる人へ託される。

株式会社すぎうら 代表取締役 杉浦茂樹(すぎうらしげき)

Q:杉浦社長、今日はよろしくお願いします。まず最初に株式会社すぎうらの事業内容から聞かせて頂けますでしょうか?

弊社は1994年に創業し、現在では6業態9店舗の運営と、そのお店に仕込んだ食材を供給するセントラルキッチンで計10拠点を運営しております。お店の方はお客さまの変化するニーズにお応えすべく多業態で展開し、セントラルキッチンでは自店舗だけへの供給だけにとどまらず、同じ飲食店からの仕込みを請け負うOEM事業も展開しており、一つの柱として成長してきております。お客さまの笑顔を力に変え、おかげさまで今年で30周年を迎えた会社になります。

Q:ありがとうございます。杉浦さんは16歳のころには食の道に進まれたと伺っております。どのようなキッカケがあって創業を決意されたのでしょうか?

僕は16歳のときに高校をやめ、京都のとある仕出し屋さんに拾っていただきました。拾っていただいたからには一生懸命やろう!と目の前の仕事に向き合い、料理の腕前はもちろん人としても成長させていただき、とてもお世話になったんです。しかし、給与面や労働環境は、今では考えられないような非常に過酷なもので、ここでは10年も続けられないと思ったんですよね。そんな感情がキッカケになって、この素敵な仕事を自分の生業にするために16歳のころに10年後に創業すると決意しました。

Q:とても過酷な環境を乗り越えられて創業された杉浦さんですが、この30年間、どのようなことを大切にしてこられましたか?

とにかく「人の役に立つ」ということです。人は誰でも「誰かに認められたい」という気持ちがありますが、僕は、まずは役にたって相手を喜ばせよう!その上で相手に認めてもらう!という気持ちが土台としてあるんですね。なので仕事においても「人の役に立って喜んでもらおう!」という想いを大切にしようと思ったんです。店舗展開も最初は「四季の味すぎうら」でしていきました。しかし、変化の早い現代において、お客さまにどんなお料理を提供し、どういう業態であれば喜んでいただけるのか、を追求した結果、現在のような多業態での事業展開に繋がっていったんです。

Q:顧客ニーズに応えていくのは商売の基本ですよね。そんな基本を大切にされてきたからこそ今がお有りかと思いますが、今後は、どのようなビジョンをお持ちなのでしょうか?

事業承継に本格的に取り組んでいこうと思っています。私は事業を10年スパンで考えるようにしていて、16歳で10年後の起業を決意し、創業してからも経営判断は常に10年スパンで考えてきました。30周年を迎えた今、次の10年をどうしていくか?と考えたときに出てきた答えが事業承継だったんですよ。私は現在、57歳ですが67歳までには承継していきます。とはいえバトンタッチする人間は誰でもいいわけではなく、社内外問わず、すぎうらのマインドを大切にしてくれる人に継いでもらいたいと考えています。

Q:ありがとうございます。これからも「すぎうらマインド」が引き継がれていくわけですね!さて、この辺りから読者の方が気になりそうな質問をしていきますよ!御社では新入社員が入社すると、まず何から覚えていくのでしょうか?

まずはアルバイトの方と同じ仕事を覚えていただきます。接客業務やホールのサービス業務ですね。どんなに調理希望の方であってもまずはここからです。なんでだよ!なんて思われるかもしれませんが、この仕事はコミュニケーション能力がとても大切です。「料理さえできればそれでいい」ということは決してないんですね。厨房にいれば当たり前ですが、料理人同士のコミュニケーションが生まれます。味付けや盛り付けについてはもちろん、メニュー開発や店舗開発、更には経営にまでゆくゆくは関わっていただくことになります。そこにはコミュニケーション能力は必要不可欠です。ですので、まずはコミュニケーション能力に磨きをかけるためにもサービス業務から取り組んでいただくんですよ。

Q:ゆくゆくは経営に関わっていく、とのことですが、どのようなステップを踏まれるのでしょうか?

数か月〜半年程度、サービス業務を覚えていただいた後は、厨房に入って盛り付けや切り出しの仕事から始めていただき、徐々に味付けや魚をおろしてもらうようになります。そして、弊社では店舗規模によって厨房内に2〜4つのポジションを設けています。そのポジションを上がっていってもらい、最終的には予算や実績などを管理する店長職を目指していただく形になります。数字が苦手な方は、ここで料理長を目指す形になりますね。そこで数年間実績を積んでいただいた後、店舗開発などの経営に関わっていただくようになります。

Q:お話を伺っておりますと、サービスや料理だけではなく、仕入れから経営まで一貫して関われる、というのが御社の強みなのかなと思うのですがいかがでしょうか?

そうですね。幹部と距離が近いからこそできることだと思っています。私たちはお客さまの新しいニーズにお応えすべくメニュー開発から新規出店までを日ごろから検討しております。その際も幹部だけで方向性を決めるのではなく、料理長や店長をはじめとする現場からの意見を取り入れながら決めていきます。そういう意味では料理人ではなく商売人なんですよね。お客さまからいただくお代は料理人、仲居さん、サービススタッフ、家賃、調理器具などすべてのリソースの総和で決まります。つまり、それぞれに役割があってチームで動いているわけです。料理やサービスだけではなく経営に携わることによって商売を学ぶことができる。それが強みですね。

Q:ありがとうございます。ここで杉浦さんの想う飲食業の素晴らしさをお聞かせください。

「楽しい!」そのひと言に尽きます。お客さまを喜ばせるために自分で仕入れ、仕込んで、接客して、結果、お客さまから直接「ありがとう」をいただいて、その上お代まで頂戴できます。それが楽しくてたまらないんですよ。そして、こんなにも楽しいお仕事が僕のような中卒のヤンチャ坊主でも実現できます(笑)。つまり誰でもこの素敵なお仕事を商売にできるってことです。もちろん、始めやすい分、残念な結果になりやすいのも事実ですが、だからこそ商売人になることが必要だと思っています。

Q:ありがとうございます。最後になりますが、読者の皆さまへメッセージをお願いします。

美味しいものを食べて幸せになる。これは世界に共通した価値観だと思います。そして和食はユネスコ無形文化遺産に登録されているようにとても価値のあるものなんですね。日本だけにとらわれず世界に羽ばたいてほしいな、と思いますね。

株式会社すぎうら 統括マネージャー 西村惇(にしむらじゅん)

Q:続いて統括マネージャーの西村さん、よろしくお願いします。まず最初に西村さんのお仕事内容からお聞かせください。

現在は、京都エリアを中心に10拠点全体の営業を統括させていただいております。具体的には私たちは「QSC」と呼んでいますが、クオリティ、サービス、クリンリネス(清掃)の3点を重点的に改善し、更には「ES」と呼ばれる従業員満足度の向上にも社長である杉浦と一緒に取り組んでおります。

Q:ありがとうございます。とても重要な役割を担われているわけですね。どんな経緯で入社されたのでしょうか?

僕は教員を目指していたのですが、教員免許の取得で挫折してしまい、アルバイトしていた飲食店でそのまま社員になりました。仕事自体も魅力的でしたが、その飲食店がとても教育熱心で「飲食店でも教員と同じような仕事があるのか」と思って食の道に進むことを決め調理師免許を取ろうと思ったんです。そして1年半ほどで取得し面接を受けるわけですが、その一発目の面接がすぎうらだったんですよ。しかも面接官は杉浦で、内定をふっ飛ばしてその場で就職が決まったんです(笑)。

Q:運命的な出会いだったわけですね!入社して「良かったな!」と思うことはどんなことでしょうか?

すべてのものを一から自分たちで作り上げる楽しさがあることです。社員として働いていた飲食店はすぎうらとは真逆ですべてがマニュアル化されていました。ですのでその通りやればいいわけですが、ここでは違います。マニュアルがないので全部、自分たちでやります。そこに楽しさがあるんです。

Q:それはやりがいがありますよね!逆に「これは良くないな」と思うことはありましたか?

逆にマニュアルがなさすぎることですね。特に労働環境です。飲食業はどうしても時間にルーズになってしまうときがあります。前職でのマニュアルも参考にしながら改善を重ねてきましたが、マニュアルで縛りすぎてもダメですし、ルーズ過ぎてもダメなんですよね。ここは今後の課題で現場の意見も聞きながら杉浦と一緒に改善していこうと思っています。

Q:具体的にはどのように改善していかれるのでしょうか?

まずは、休日と労働時間です。休日に関しては年94日にとどまっていますが、有給含めて最大106日取れるようにしたいと思っています。次に労働時間ですが、日々の営業を2交代制にしてズルズル伸びがちな労働時間にも手を打っていきたいと考えております。

Q:素晴らしいですね!ズバリ!御社の強みはどんなところにあるのでしょうか?

これは会社の理念でもあるのですが、共に学び、共に成長できる環境があることだと思っています。その環境は、年齢に関係なくすぐにでもやりたいことに挑戦できる会社であるからこそ育まれたものだと思っております。

Q:ありがとうございます。終盤ですが、ここで西村さんの想う飲食業の素晴らしさをお聞かせください。

自分の作った料理でお客さまを笑顔にできるところです。そこにすべてが集約されていると思います。料理を作る人間やサービスを提供する人間がいなければ飲食店じゃなくていいわけですからね。

Q:確かにそうですよね!最後になりますが読者の皆さまへメッセージをお願いします。

先ほども話しましたが、弊社では年齢は関係ありません。新入社員だからといって仕事内容が変わることもありませんし、理念に共感し、共に頑張る方にはすぐに重要な仕事が任される会社です。その中で皆さんと共に学び、共に成長して行きたいと思っております。よろしくお願いいたします。