責任を持って決断する。現場主義で挑む焼肉店の挑戦|蔵屋フードサービス

投稿日:2025年9月29日(月) | 最終更新日:2025年9月29日(月) 社長インタビュー

完全週休2日制の導入、現場への決裁権委譲、独立支援──焼肉店「ホルモン牛蔵」を展開する蔵屋フードサービスは、従業員の人生に責任を持つ経営で成長中。現場が主役の焼肉経営に迫る。

株式会社蔵屋フードサービス 代表取締役 花城康輔(はなきこうすけ)

Q:花城社長、今日はよろしくお願いします。まず最初に株式会社蔵屋フードサービスの事業内容から聞かせて頂けますでしょうか?

弊社は2022年4月創業し、「ホルモン牛蔵」の3店舗をメインにラーメン店を含む計4店舗を運営しています。各テーブルで生ビールが注げる60分980円の飲み放題や、仕入力を活かした希少部位の安定供給や低価格帯での提供が強みです。この業界は、「辛い仕事だよね。」そう言われて久しくなりました。そんな現状を変えるため、まずは完全週休二日制を導入しました。しかし、単に待遇をよくすることが目的ではありません。お客さまに幸せを提供し牛蔵のスタッフとして責任を果たす。その積み重ねが結果として待遇の向上につながる。そんな考え方をもった会社です。

Q:ありがとうございます。花城さんはコロナ禍に創業されております。各テーブルで生ビールが注げる!なんていうと設備投資もかかって大変だったかと思うのですが、どのような経緯で創業されたのでしょうか?

父が経営していた飲食チェーンのフランチャイズで20年間役員として働いていたのですが、経営方針に意見が食い違うことも1回や2回じゃなかったんですね。そんな中、コロナ禍をキッカケに事業承継の話が持ち上がって。事業を継ぐ意志のあった弟に会社を任せ、僕は別の道を進むことにしたんです。そして、雇用問題を抱えていた守口にあったレストランを焼肉店にリニューアルする形で、2022年4月に「ホルモン牛蔵」として一号店を創業することになりました。

Q:そんな背景がお有りだったんですね。100年に一度のパンデミックだ!とまでいわれたコロナ禍を乗り越えられた花城さんですが、どのような考え方で乗り越えられたのでしょうか?

「決断する」ということは、言い換えれば「責任を持つ」ということです。つまり、従業員を雇うということは、その方の人生に責任を持つことだと思うんですね。入社してきてくれたことは嬉しいことですが、その後を放置するような会社がお客さまに幸せを提供できるはずがありません。入社をスタートとするなら、出口にもきちんと責任を持つべきです。その従業員が将来、独立したいと考えているならば全力で支援しますし、逆に弊社で事業を大きくしていきたいというのならば、権限を委譲して、それをガソリンにして一緒に突き進んでもらいます。こういった舵取りをしてきたことで乗り越えられたのだと思います。

Q:頭では分かっていてもなかなか出来ないことですよね。これまで一緒に危機を乗り換えた従業員さんにはどんな想いをお持ちでしょうか?

これまで少し固いお話をしてしまいましたが、やはりエンジョイしてほしいですね!やっぱりこの仕事を醍醐味は「美味しかったからまた来るよ!」「もう焼肉っていったらホルモン牛蔵だわ」なんていうお声が何よりの栄養剤なんですよね。達成感に繋がるんですよ。そしてその達成感は現場に権限を落とすことで100だったものが150にも200にもなります。それはそうですよね。自分たちのやってきたことがお客さまに評価されるわけですからね。

Q:確かにそうですよね!それがまたこの仕事の素晴らしい側面でもありますよね。さて、この辺りから読者の方が気になりそうなことを伺っていきますよ!御社では働く上で一番大切にされていることはどんなことでしょうか?

現場以上に大切なものはないと考えています。なぜなら、お客さまを幸せにすることが、この仕事の唯一と言ってもいいミッションだからです。だからこそ、私は現場に裁量を持たせることを大切にしてきました。上から「あれをやれ、これをやれ」と指示が降りてきて、その通りに動いた結果、うまくいかなかったら「お前たちの責任だ!」。これではうまくいくものもうまくいきません。大切なのは、その逆の仕組みです。上は方向性を示すだけにとどめ判断は現場が行う。そのために決裁権を委譲する。そして、うまくいけば「現場のおかげ」。うまくいかなければ「上が責任を取る」。そうすることで、現場の士気は上がり、成果が出ればやりがいも大きくなるはずなんです。

Q:なるほど。「方向性を示すだけ」とのことですが、それはつまり花城さんは現場には出ないということだと思うんですね。意思疎通はどのようにして行われるのでしょうか?

店長などの幹部とは1対1で食事を共にし、常にミーティングを重ねています。僕は経営者として、従業員が叶えたいことを実現する手助けをするのが使命だと考えています。もし独立したいのであればその夢をサポートしますし、共に事業を大きくしたいのであれば権限を委譲して、その権限を活用して突き進んでもらいます。そんな風に進めています。 でも不思議なことに、こうしたミーティングを重ねていくうちに皆が自然と経営者目線になっていくんですよ。人件費は増え、原材料費は高騰する時代で、インフレの影響で値上げしたくてもしづらい状況です。また、席数の制約によって売上の上限も決まっているため利益を確保しづらい状況が続いているんですね。そんな問題をどう解決するかが重要です。そこで求められるのが経営者目線での意思決定と創意工夫なんです。

Q:ありがとうございます。御社は従業員さんとスクラムを組みながら課題解決を進めているんですね。後半に差し掛かりますので、ここでズバリお聞きしますが、どんな方に来てもらいたいとお考えですか?

自分の裁量で成果を出してみたい方にはチャレンジできる環境が整っていますので、ぜひ覗いてみてほしいと思います。また、ありきたりかもしれませんが、焼肉店の経営に興味がある方にとってはよい勉強になると思います。リニューアル前のレストラン時代から、肉の仕入れには自信があり、独立後も人脈を活かして仕入れに厚みが増しました。希少部位を提供できないお店もある中、当店では安定的に供給できるだけでなく、価格競争力のある仕組みも整っているからです。

Q:花城さんの想う飲食業の素晴らしさについてもお聞かせください。

人間誰しもそうだと思いますが、食事をしているときって幸せを感じられますよね。ということは食を提供すること自体が幸せを提供できるということなんですよね。しかし、それだけならお店じゃなくてもできます。だからこそ、例えば頑張った自分へのご褒美や大切な人との記念日など、特別なシーンとともにご利用いただくことで、さらに価値のある幸せをお届けできる。それが素晴らしさだと思います。

Q:ありがとうございます。最後に読者の皆さまへメッセージをお願いします。

何事もやってみないと分からないものです。勇気をもって1歩を踏み出してほしいですね。