カジュアル割烹の先駆者が語る“喜ばれる料理”と人材育成の哲学|心屋
大阪・北新地の人気割烹「心屋」。地元・淡路島の食材を活かした“カジュアル割烹”で注目を集める林社長が、創業ストーリーから独立支援、人材育成への想いまでを語る。料理人×経営者としての軸に迫るインタビュー。
株式会社心屋 代表取締役 林弘治(はやしこうじ)
Q:林社長、今日はよろしくお願いします。まず最初に林社長が独立された経緯からお聞かせください。
僕は淡路島で生まれ飲食店を営む家庭で育ちました。ですので毎日、楽しそうに仕事をする両親を見て「料理は楽しいもの」だとずっと思っていたんですよね。休みの日には自分で昼ご飯を作ったりお店の手伝いもしていました。なので将来は料理の道に進もうと自然に思っていたんですよね。その為には人脈が必要だろう、と言う事で島内1、2を争う生徒数が多い高校へ進学しました。そして高校卒業後、大阪の和食店や懐石料理のお店で腕を磨き、地元淡路島の最高の食材は北新地でこそ活かすことができる!と思い2009年5月に心屋一号店をオープンさせて頂きました。
Q:ありがとうございます。実際に創業されてみていかがでしたか?
それが最初はなかなかうまく行かなかったんですよ。お客様がお一人も来られない、なんて言う日もありましたが産地直送で減価率は抑えられていたことが幸いして大事には至りませんでした。そこで客単価を5,000円に設定し「カジュアル割烹」というスタイルを打ち出したんですよ。そうしたらメディアにも取り上げられるようになり、このスタイルが受け入れられるようになったんです。

Q:ありがとうございます。カジュアル割烹という新しいスタイルで勝負をされてきた林社長ですが、経営者として大切にされているお考えをお聞かせ下さい。
お客様の喜びが僕にとっては1番の喜びなんですよ。これだけは絶対にブレることはありません。例えばコース料理をお出しする場合、お客様のお口に合わないものや苦手なお料理も1品2品ありそうなものですが、僕の場合、そこも一切妥協せずお出しした全ての料理に満足して頂きたいんですよね。もちろん100%満足させられているなんて思っていませんが、そういう心構えでいる、ということです。最近オープンした新店舗では僕が料理を作ってるんですが、お客様が箸を口に運ぶ度に「喜んで頂いてるのかな?」「美味しいと思ってもらえてるかな?」とずっとお客様のお顔を見てないようで見ていますよ(笑)

Q:「心屋に足を運べば間違いない」という信頼感がお客様との間に生まれていそうですね!ありがとうございます。創業されて14年と言う事でお客様はもちろんのことたくさんの従業員さんとの出会いもお有りだったかと思います。そんな従業員さんにはどんな思いをお持ちでしょうか?
志を高く持って頑張ってほしいなと思っています。志が高い=独立してほしい、ということではなくて、ここでいう志とは「目標を持って仕事に取り組んでほしい」ということです。自身で明確な目標を立てて仕事をすれば成長スピードはもちろんのこと、お店のレベルも上がっていきます。そして頑張る姿を見て頂いているお客様からも「若いのに頑張ってるね」とご評価頂けるんですよね。つまり良いことづくしなんですよ。ですのでうちは、入社後の面談時、独立も視野にいれた目標設定をしてもらっています。そして独立を目標にした人は全力でそこに向けて頑張ればいいし、独立が目標ではない人もその目標達成に向けて全力で頑張ってほしいと思いますね。その目標がなければ、ただシンドイだけですよ。
Q:確かにそうですよね。「面談の時に目標設定をされる」との事ですが独立を目標にされて入社され今までに何人くらいの方が独立されていったのでしょうか?
今までに8人が独立していきました。
8人ですか!めちゃくちゃ多いですね!独立を目標にされた方はどのようにして独立されていくのでしょうか?
まずは料理を覚えて頂きます。ここが出来なければ何も出来ませんからね。そして数値管理ですよね。ここでは主に減価率の管理を学んでもらいます。過去に原価率を抑えて厳しいときを乗り越えた経験があるからですね。最後にメニュー開発です。この3つのステップを5〜7年くらいのスパンで踏んでもらい独立をする人が多いですね。志が高い人に皿洗いだけ!なんてさせませんよ。

Q:ありがとうございます。和食は10年以上の修行が必要だ、なんて言われる中でかなり短いんですね。ソフト的な部分と言いますか性格的な部分に関してはいかがでしょうか?
素直で元気であることですね。素直であるからこそお客様に可愛がられスタッフ間のコミュニケーションもうまく行くと思います。素直で元気で志も高ければ絶対に成功しますよ!
Q:ここでコミュニケーションという言葉が出ましたが、言葉自体がかなり抽象的だと思うんです。林社長の考えるコミュニケーションとは、どのようなものですか?
相手が何を考えているのか?を想定して、その想定したことに対して先回りして行動に移せること、だと思っています。
Q:なるほど。「行動」なので何も言葉だけではないんですよね。読者の方の中にはコミュニケーション=話さないといけない、みたいに捉えてらっしゃる方も多いと思うんですよね。大変、勉強になりました。ここで他社にはない心屋さんの強みをお聞かせ下さい。
独立しやすい環境にはあると思います。特に店長にはメニュー開発に関してはかなり自由度を持たせています。こんな食材を使ってみたい!あんなメニューを作ってみたい!といったことには、どんどんチャレンジしてもらっています。チャレンジした結果、ミスが起きてしまうこともありますが、そんなのは僕が責任を取れば済む話です。そういう意味で言うと独立を疑似体験できる環境にあると思います。そしてタイミングになったら自分のお客様も持っていってもらって独立し是非とも成功して欲しいと思いますね。

Q:林社長、なかなか「お客様を持っていっていい」なんて言えるものじゃないですよ・・・。
いえいえ、これまでに十分に売上に貢献してくれましたから。本当に頑張って欲しいと思いますね。
Q:ありがとうございます。最後に志を高くして食の道を目指す方々へメッセージをお願い致します。
人生1回きり。大切なことなので繰り返しますが人生は1回きりなんです。チャレンジして欲しい。心の底からそうお伝えしたいです。志高く飛び込んできてくれた人には、僕の持っている全てを惜しみなくお伝えしますし、一緒にお客様が喜ぶ素敵なお店を作っていきましょう!