飲食店の人材不足を解消するリファラル採用とは|アフターコロナの採用戦略
飲食店ではリモート面接などを取り入れ、ソーシャルディスタンスを保ち「三密」を回避しながら人材採用や面接を行っています。
そんなコロナ禍における飲食店の人材採用において、ツテやコネといった人脈を活用する 「リファラル採用」が注目を集めています。
今回はリファラル採用について詳しく説明するとともに、飲食店の実例をご紹介していきます。
●目次
●コロナ禍で飲食業界に人材不足問題に変化が
新型コロナウイルスが流行する以前、飲食業界の人材不足は深刻な問題として認知されて いました。
働き手が少なくなる一方で飲食店の離職率はとても高い水準となっていましたし、飲食店経営者や店長の方々も採用した人材が定着しないと悩まれた経験があるかもしれません。
帝国データバンクの調査を見ても、飲食業界の80.5 %が「従業員が不足している」と回答しています。
(参考:帝国データバンク|人手不足に対する企業の動向調査(2017年度))
それから約3年後の2020年5月25日、帝国データバンクは人手不足に対する企業の見解についての調査結果を再度発表しました。
調査結果によると、「人手が過剰」と回答した企業は21.9 %と前年同月から13.5ポイントも増加しています。
さらに従業員が「過剰」としている上位10業種の中で、飲食業界は上位2番目という結果も出ています。
調査は今年4月に実施され1万1961社が回答。
(参考:帝国データバンク|人手不足倒産の動向調査(2019年度))
もともとの離職率の高さに加えてインバウンド需要などによる人手不足状態が長く続いていましたが、新型コロナウイルスの影響によって状況が大きく変わってしまったのです。
しかし、新型コロナウイルスによって人手不足問題が根本的に解消されたというわけではありません。
ワクチン開発などによって新型コロナウイルスが終息に向かえば、また飲食業界の人手不足問題が浮上してきます。
アフターコロナの未来を見越して、飲食店では今の状況でもできる限り人材の採用・育成を行うことが大切でしょう。
●飲食店でもオンライン採用が開始
新型コロナウイルスによって「三密」(密閉・密集・密接)を避けることが求められるなか、企業の採用・説明会などではオンラインシステムの導入が相次いでいます。
もちろんこの流れは飲食業界にも広がっていて、多くの飲食・外食産業の企業でオンラインでの採用フローの導入が進んでいます。
このオンライン採用の流れは一過性のものではなく、新型コロナウイルス感染症による影響が収束したあとも継続することが予想されています。
これまでのような企業や店舗に出向くなどの対面を基本とした採用フローだけでなく、オンラインを活用した採用フローも社会へと浸透していくことでしよう。
面接を受ける応募者も、オンラインによる面接に慣れ始めています。
現在すでにオンライン採用を導入している飲食を外食産業の企業には、以下のようなところがあります。
◆マクドナルドホールディングス
・新卒採用での会社説明会をオンラインで動画視聴できるよう準備
・アルバイト・正社員面接などにてWEB面接システムを導入
◆株式会社モンテローザフーズ
・アルバイト・正社員面接などにてWEB面接に対応
◆株式会社クレョンハウス
・アルバイト・正社員面接などにてWEB面接に対応
多くの企業では説明会や一次面接など限定的にオンラインシステムを導入している場合がほとんどですが、今後は面接から採用に至るまでの全てをオンラインで完結する企業も増えてくるかもしれませんね。
●ツテやコネを活用したリファラル採用が主軸に
コロナ禍における飲食店や飲食業界の人材採用においては、やはりオンライン採用が大きく注目されています。
しかし、実際の飲食店の現場では「リファラル採用」というものが主軸となっているようです。
リファラル採用とは、従業員や社員から新しい人材を紹介してもらう採用方法のことです。
お店の内情などをよく理解した従業員が紹介する人材であるため、より店舗に適した人材を募集・採用できるというメリットがあります。
また、求人誌や求人サイトといった求人メディアに広告費をかけずに済むので採用コストを削減できるというメリットもありますね。
リファラル採用を取り入れる際は人材配置への配慮や紹介者に対する報酬の設定などを考えなければなりませんので、その点については事前の準備と注意が必要です。
現在でも、実際にリファラル採用を取り入れている飲食店・外食産業の企業多くあります。
ファミリーレストランの「ガスト」「バーミャン」などを運営する株式会社すかいらーくホールディングスは、約7000名のアルバイトをリファラル採用しています。
さらに、すかいらーくホールディングスのような大手チェーン企業だけでなく小規模経営の飲食店でもリファラル採用は取り入れられています。
今回は堺筋本町にある中華料理バルの副店長の方に取材を行い、リファラル採用の活用などについてお話を伺ってみました。
「当店は緊急事態宣言によって4月から休業状態が続いていましたが、6月1日に営業を再開しました。
店が休業していた当時は、それまで働いていたアルバイトの人たちに休業のお願いを出して休んでもらっていましたね。
営業再開に伴って人手も必要になってきたのですが、今の経営状況では求人広告を出す予算も立てられていません。
そこで活用しているのが「リファラル採用」です。
もともと近隣にはうちと同じように小さい個人経営の飲食店が集まっていて、そういったお店ほどお客様の紹介やツテ・コネから人を採用することが多くありました。
今いるアルバイトの人たちの半数はリファラル採用ですが、長く勤めてもらっているので本当に助かっていますね。」
このように、 実際にリファラル採用を取り入れたことで人材の定着率が上がったという飲食店もあるようです。
●飲食店の未来を担う人材をさまざま採用方法で探そう
今回は新型コロナウイルスのもとで行える人材採用について、従業員などの人脈やツテ・コネを活かしたリファラル採用をご紹介しました。
アフターコロナが続く中では求人広告掲載料なども頭を悩ます問題となってくるため、コストも削減できるリファラル採用は積極的に活用していくべきでしよう。
近隣の飲食店の採用状況や地域特性を考えつつ、さまざまな人材採用の手段を取り入れてみてください。
すでにリファラル採用を取り入れようと考えているならば、まずはリファラル採用や人材紹介制度についてのフローや特典制度を定めたガイドラインを作成してみてはいかがでしょうか。
ガイドラインがあれば従業員の方もリファラル採用がどのようなものか具体的に知ることができます。
また、特典制度が明記されていれば友人や知人へ積極的に声をかけて協力してもらうこともできるはずです。
これからのアフターコロナの時代を生き抜くために、新しい取り組みを是非始めてみてください。「食ジョブコラム」でも、人材獲得のためのノウハウを紹介しているので、ぜひお役立てくださいね。
- SNSで人材採用をするソーシャルリクルーティング(前編)
- SNSで人材採用をするソーシャルリクルーティング(後編)
- 『採用応募者が絶えない?店長がしていた2つのこと』
- ☑アルバイト採用のコツ|主婦層に「応募しなければ」と思わせる人材獲得手法
さいごに具体的にどうやってリファラル採用を導入すればよいのか、参考になる実例を挙げておきます。ぜひお店なりの工夫をしてみてください。
飲食店のリファラル採用・事例
◆すかいらーくグループ
友人や知人を紹介してすかいらーくグループのクルー採用へとつなげるリファラル採用制度。
リファラル採用を成功させるために、「情報発信」「表彰」「社内キャンペーン」という3つの施策を実施。
社長直々によるリファラル採用の情報発信を行い、リファラル採用での紹介数が多い店舗のマネジャーを表彰。さらに、取り組みの周知や成果の報告は社内報やポスターで定期的に行う。
面接後に紹介された友人・知人が入社して20時間勤務すると、紹介した人・された人それぞれにすかいらーくレストランツ全店で利用できる5,000円分のお食事券が贈呈される。
https://crewrecruiting.skylark.co.jp/friends/index.html
◆株式会社モスフードサービス
社員やキャスト(店舗で働くアルバイト・パートの方)が自分の知人や友人を紹介して採用へつなげるリファラル採用制度。
<リファラル採用の流れ>
- ① 社員やキャストが友人や知人に「リファモスアプリ」から、スマートフォンなどへSNSを利用して、会社紹介や募集情報を随時紹介。
- ② 推薦された友人や知人は、興味のある募集情報へ応募することができ、「興味あり」として一時登録をすることも可能。
- ③ 応募があった場合、紹介者が応募者を推薦するための「紹介コメント」を記入。
- ④ 「紹介コメント」をもとに、人事担当者が採用面談を行う。
紹介された友人・知人が採用に至った場合には、モスバーガーで利用することが出来るプリペイドカードを組織貢献へのインセンティブとして支給。
https://www.mos.co.jp/company/recruit/
◆東京レストランツファクトリー株式会社
リファラル採用を強化するためにリファラル採用に特化したサービスツールを活用。
リファラル採用サービスツールでは従業員それぞれにマイページが用意され、スマートフォンでの閲覧が可能。
さらにリファラル採用求人情報や活動状況、採用決定情報にキャンペーン・紹介数ランキングなどを半自動で告知してくれる。
採用者を紹介したスタッフには5万円支給など、採用結果に合わせてスタッフへの還元も行なっている。