大阪・黒門市場に、京都・錦市場、神戸・南京町。観光客が増える名所で、飲食店が失敗しがちな集客のワナ②
前回は、目の前のニーズや一時的なトレンドに右往左往してしまうと、常連客が離れたり、理想とする経営ができなくなったりすると、お伝えしました。
この問題を解決するために目をつけたのが、第3の道です。
一見はあいなれない関係、例えば、訪日外国人と地元客、観光客と常連客どちらかではなく、どちらもが楽しめるよう、地域のブランド力アップや独自の楽しみ方をアピールすることに可能性があるのではないか。
今回は、文化的な背景が評価されている成功事例を紹介します。
「大阪らしい」飲食店とは
少し変わった視点ですが、大阪独自のサービスです。
大阪では開店準備中でも顧客を入れるお店が多いことで、支持を集めています。(1)
大阪にある名店50店にアンケート調査をして「開店時刻の30分から1時間前でも客を入れる、または入れたことがある」と回答したのは48%に上りました。
だから早くオープンすればよい、と言いたいわけではありません。相互の事情を考慮して接客をする、という大阪人の考え方が評価されています。
このような思想は、大阪がまだ「天下の台所・大坂」と言われていた江戸時代末期、明治時代初期から続いているようです。
難波の中心地で居酒屋を営むオーナー様に、筆者がインタビューしたところ興味深い話を聞かせて頂きました。
『うちは閉店時間を明記してません。ラストオーダーの時間だけ書いています。遅い時間に来てもらった場合、閉店時間が気になって落ち着いて食事できないでしょ。旅行で大阪に来られたお客さんで、時間を忘れて食事できたのがうれしかったらしく、2日連続で来てくださいましたよ。あと休日でも、連絡してもらったら空けます。常連さんがよく利用してくれます。その代わり、仕入れ出来ないものもあるので理解してもらってますし、売上にもかなり貢献してくださいます。』
お客様とお店ではなく、お互いにビジネスパートナーとして見ているような印象をインタビューからは受けました。それを証明するかのように、こんなひと言もいただきました。
『やってもいんですけど朝まで営業とか、年中無休にしたら価値なくなるというか、ありがたみがないでしょ(笑)。閉店時間をかかない、休日でも空けると特別感がでます。このへんは商売ですから。』
江戸・明治時代からお客様との距離が近い大阪の食文化。歴史に根差しているからこそ、一時的ではなく、継続的なサービス提供が可能なのではないでしょうか。
さいごに
貴店のエリアには、どのような文化や歴史が息づいているでしょうか。
次回以降のコラムでは、常連客・観光客の相反するタイプの顧客ニーズを分析しながら、どのような対応ができるのか考えて行きましょう。
【参考文献・サイト】
(1)大阪の飲食店、準備中でもいらっしゃい(もっと関西) |日本経済新聞