漫才・コントから学ぶ!宴会が盛り上がる、メニュー表・料理の作り方②
前回はお笑いの役割を考えながら、飲食店におけるユーモアの必要性を説いてきました。
お笑いは人間関係における緊張を緩和したり、トラブルを回避したりするために必要とされます。
そして飲食店は、飲みニケーションと呼ばれる本音でのトークや、距離感を縮めるコミュニケーションをする環境として活用されている現状をお伝えしました。
ここで注目しているのがユーモアの力です。笑いが生まれて活気づいている飲食店は、お客様の満足度を上げるのではないか。
この考えにもとづいて、後半のコラムではどのようなユーモアをお客様に提供すればいいのか、日本のお笑い文化をヒントにして説明をします。その後で、実際に成功している事例も紹介します。
笑いは、ボケではなくツッコミの後で生まれる
そもそも日本のお笑い文化の特徴はどこにあるでしょうか。海外、とくに欧米のお笑いに対する考え方とどのように違うのでしょうか。
アメリカで主流となっているのは、スタンドアップコメディと呼ばれる話芸です。一方で日本では漫才やコント。決定的な違いは、ボケとツッコミの関係があるかないか。
一度、比較をしてみましょう。
アメリカではLouis C.K.、
Hannibal Buressや
Aziz Ansari
といったコメディアンが人気を博しています。
彼らのネタは人種差別や性差別、社会や政治、常識への問題や矛盾に対して、批判や皮肉まじりのコメントをして笑いに変えるものが中心。基本的には、1人で話を盛り上げて幕を閉じます。
日本における漫才やコントは、ツッコミとボケの関係で形成されるのが基本です。
とりわけ評価の高いコンビで言えば、漫才では
学天即、
和牛、
コントでは
ジャルジャル
が挙げられます。
題材は、ほとんどが生活で身近な話題(遊びや恋愛、仕事、勉強)です。
参考ネタに挙げた、学天即の漫才を例にしてみましょう。ボケ担当のつくねが“しょーもない質問”を、ツッコミ担当の奥田にしていきます。
「無人島に1つだけ持っていくとしたら、なに持っていく?」や「ドラえもんに1個だけ道具出してもらうとしたら、なに出してもらう?」など。
注意してもらいたいのが、どこで笑いが起きているかです。
1つだけ掛け合いを見てみましょう。“しょーもない質問”をされて嫌がる奥田。「人生最後の日になに食べたい?」と聞かれて、なぜ人生最後の日になったか理由を探ろうとします。
奥田「なんで俺は人生最後の日なわけ?」
つくね「寿命かなんかちゃう?」
奥田「寿命やったら柔らかいもんでえぇわ」
笑いはつくねの発言ではなく、奥田のツッコミが終わったと同時に起きています。なぜ、ボケではなくツッコミの後で生じるのでしょうか。
オーストラリア出身お笑い芸人、チャド・マレーンによれば、このような解説がされています。
お客様はツッコミ、飲食店はボケに
このようにしてツッコミによって笑いが生まれやすくなるのです。言い換えれば、ツッコミどころ満載のボケを用意することで、笑いになりやすくもなるということ。
そこで1つ提案があります。長々とお笑い論を語ってしまいましたが、飲食店に置き換えてみましょう。
ボケを飲食店、ツッコミをお客様、つまり1組のコンビに見立ててみてはいかがでしょうか。ツッコミたくなる料理や空間、人材を用意することで、お客様にツッコミが入り、笑いが自然と生まれてしまうのです。
イメージしづらいので、わかりやすい事例を1つ挙げます。
小学校をコンセプトにした『個室居酒屋6年4組』(http://www.6nen4kumi.com/)です。小学校の校舎を再現した店内で、お客様は生徒、スタッフは学校の先生、メニュー表は時間割という設定。ランドセルや帽子も用意されており、揚げパンやソフト麺など給食メニューに抜き打ちテストもあり。
コンテンツは豊富なので、1つ1つにお客様がツッコミを入れるだけで、笑いが生まれて盛り上がる環境となっています。
さいごに
【参考文献・サイト】
(1)チャド・マレーン『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(2017)NHK出版親書