接客する時の言葉遣いは、飲食業界に限らず重要視されています。
言葉遣いだけではなく、どんな“表情”で接客するかも、大きなポイントです。
豊かな表情や、自然な笑顔を作ろうとして、表情筋を鍛えたり、口角をあげたりと、トレーニングをしたことがある人も多いのではないでしょうか。
接客は、表情がすべてではありません。
笑顔で、何もかもが上手く行くわけでもありません。
実際に、これまで飲食店での接客レベルをあげる記事を公開してきました。こちらもぜひご活用ください。
【接客力アップの関連記事】
接客の仕事をする上で大切なことは他にもありますが、笑顔・表情がカギを握っていることは確かです。しかし、笑顔を作るのが苦手だったり、表情が暗いと言われて悩んだりしている人もいるでしょう。
頑張って笑顔を作ろうとするほど、顔がこわばるし、無愛想になってしまう・・・。
どうすれば魅力的な表情を作ることができるのでしょうか。
笑顔で好印象を与えることができるのでしょうか。
そこで今回は接客の際の「表情」について、押さえておきたいポイントを紹介いたします。
笑顔の作り方も具体的に解説するので、参考にしてくださいね。
■目次
「言葉と表情」で相手に伝える
飲食店で、言葉に気持ちがこもっていない人を見かけたことはりませんか?
「いらっしゃいませ」
「ありがとうございます」
「またお越しくださいませ」
のような言葉は飲食店も含め、接客業でよく使われる言葉です。
しかし、口先だけでこの言葉を発していて、心が伴っていない人も残念ながら中にはいます。
いわゆる棒読みですね。
飲食店も含め、接客業でよく使われる基本的な挨拶を“とりあえず” “形だけ”言っているのでは、当然ですがお客様には何も伝わりませんし、不信感を与えかねません。
「そんなことはない、ちゃんと気持ちも込めている」と本人が言っても、言葉と表情がちぐはぐであれば、聞き手に違和感を与えます。
料理やドリンクが美味しいお店、雰囲気が抜群にいいお店でも、気持ちが伝わらない接客を受けると、すべてが台無しになることも。
コミュニケーションには、2種類あると言われています。
- 言語コミュニケーション
- 非言語コミュニケーション
言語コミュニケーションとは、単純に言葉の内容を理解し、意思疎通をはかるものです。
非言語コミュニケーションとは表情や声色、話すときの速度など、話の内容以外の部分で意思疎通をするものです。
一般にコミュニケーションは、言語コミュニケーションが7%、非言語コミュニケーションが93%で構成されています。これは『メラビアンの法則』と言われる心理学の法則です。
聞き手側は言われた内容そのものより、言い手の表情や重要視するということを頭に置き、お客様と接する方がより伝わりやすいと言えます。
『メラビアンの法則』を活かした接客術について、表情以外にもできるノウハウを、以前コラムにしたので参考にしてください。
非言語コミュニケーションが大切だからと言って、言葉づかいは手を抜いて良いわけではありません。ビジネス敬語や、気の利いた言い回しなど、言語コミュニケーション力は磨いていく必要があります。その上で、非言語コミュニケーションが効果を発揮します。
非言語的コミュニケーションの中でも、さらに笑顔について掘り下げていきましょう。
「笑顔の大切さ」とは|接客におけるメリット
なぜ接客において、笑顔が求められるのでしょうか。
それはお客様に対して好印象を与えられるからです。
感じの良い接客を受けることができたと、顧客に思ってもらうことで、満足度のアップにつながります。
とてもシンプルな理由ですが、笑顔で接客をするメリットは沢山あります。
例えば、
【笑顔による接客のメリット】
- 良い口コミが広がる
- 再来店・再購入につながる
- 常連客と良い関係がつくれる
- ほかのスタッフから目標とされる
- モチベーション高く仕事ができる
といった点があります。
表情には、いくつか種類があります。
喜び・楽しさ、怒り・恐れ、悲しみ、驚き、軽蔑、嫌悪など。
表情の中でも、笑顔はもっともポジティブさが、わかりやすく伝わります。ほかにも接客術で好印象を与える方法はなくはないのですが、もっとも効率的なのが笑顔ではないでしょうか。
接客以外にも、笑顔でいることの大切さは語られています。とくに健康面ですね。脳への血流が良くなったり、NK細胞は活性化されりして、脳の病気予防や免疫力向上につながります。緊張が和らいで、ストレスも軽減します。
笑顔はコミュニケーションをする上で、言うまでもなく大切です。しかし、他者だけでなく、自分へのメリットも大きいことがわかります。
笑顔以外にコミュニケーションをとる方法は、こちらを参考にしてください。
笑顔不要論を考える
接客における笑顔のメリットをお伝えしました。
しかし、接客で笑顔はいらないという意見があります。
飲食店でいえば、
「料理が美味しければそれでいい」
「どうせマニュアルでやっている」
「作り笑顔で本心ではない」
「必要以上に笑顔で気持ち悪い」
など。
今では、マスクを着用して接客するお店も多いので、表情が見えづらいのも事実。
いつも笑顔で接客をする日本人に、違和感を覚える外国人の方は少なくありません。
でも、笑顔がまったくない無表情の接客というのも、ちょっと恐ろしいものがあります。
さて、みなさんは、笑顔不要論をどうお考えでしょうか。
結論から言えば、無理やり作る笑顔は辞めるべきです。この無理やりというのは、接客力を上げたくて、自分に自信が持ちたくて、何とか笑顔ができるようになりたい、そんな気持ちを否定しているわけではありません。笑顔を作れるようになる努力をしていってください。
むしろ不要なのは、不自然さを与える笑顔です。
言い換えれば、相手になにも伝わらない笑顔です。
とくに、いつも作り笑顔をしている人が該当します。
次のポイントをご覧ください。
- 誰に対しても、どんな時でも、笑顔を絶やさない。
- 「誰からもよく見られたい」「嫌われたくない」という気持ちがある。
- 本心は、できれば笑顔を辞めたい、疲れた・・・と思っている。
このような方は、少し笑顔休暇をとった方がいいかもしれません。
では、どんな笑顔であれば必要なのかを考えていきます。
【仕事のストレス対策はこちら】
魅力的に見える笑顔の条件
笑顔には、二種類あります。
魅力的なものと、そうでないものです。
早稲田大学・人間科学学術院の宮崎正己教授が、感性工学の手法によって、二種類の笑顔の条件を導いています。
【魅力的な笑顔】
「目尻に現れるシワが特徴的な『目』、次いで口角が上がることで開かれる『口元』であることが明らかになりました。つまり、頬骨(きょうこつ)筋と頬筋、笑筋と下唇下制筋を十分に収縮させ、頬を持ち上げて目を細くし、口を半月形に広げる笑顔に、人は好感を抱き喜びを感じるのです。」
【魅力的ではない笑顔】
「よく見られるのは、頬骨筋のみの収縮による目が笑っていない笑顔。また、筋肉の過度な緊張と筋力の不均衡から生じる不自然な笑顔も多いです。」
よりシンプルにわかりやすくまとめてみます。
【笑顔のポイント】
- 笑顔を決める部分は、まず「目」。そして「口元」。
- リラックス状態だと、筋力のバランスが良くなり、魅力的な笑顔になる
- 緊張していると、筋肉のバランスが崩れて、魅力的ではない笑顔になる
笑顔不要論でお伝えした、無理やり作る笑顔は、魅力的ではない笑顔の条件に該当します。笑顔の作り方はあとで紹介しますが、まずは緊張状態から解放されることが大切だということを理解しておいてくださいね。
また注意しておきたいのは、マスクを着用した接客であっても「目」が、印象を左右するという点です。マスクの有無にかかわらず、笑顔によって好印象を与えることはできます。
接客しなくても仕事をする上で笑顔は必須
今回は、接客における笑顔の重要性をテーマにしていますが、働くすべての人において笑顔は有効です。
飲食業界なら、ホールだけではなく、キッチンを担当する人も、現場に立たない管理職の人も、仕事をする上で大切なこととして理解をしてください。
キッチンや管理職など、直接お客様とやり取りしないポジションでも笑顔は大事なの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、先ほどご紹介した“非言語コミュニケーション”で重要なのは、言葉そのものではなく、表情などの言葉以外の部分ということ。
その場の雰囲気も“非言語コミュニケーション”を構成する大事な要素のひとつと言えます。
お店のスタッフ全員が意識的に笑顔の回数を増やすことで、お店の雰囲気が明るくなります。ポジションに関係なくスタッフが一丸となって“笑顔”をキープする方が、お客様とのやりとりもスムーズです。
心理学で「表情フィードバック仮説」と呼ばれる考え方があります。
これは感情が表情をつくるのではなく、表情が感情をつくるという理解です。つまり、楽しいから笑顔になるのではなく、笑顔だから楽しくなるということ。
まずは笑顔を作ることで、
- 仕事が楽しくなる
- 職場の雰囲気が良くなる
- お店に活気があふれる
という効果が期待できるのです。
笑顔で働くためのコツ
ここからは接客に役立つ笑顔の作り方をお伝えしていきます。
復習です。
先ほどお伝えした魅力的な笑顔の条件は覚えていますか?
振り返っておきましょう。
【笑顔のポイント】
- 笑顔を決める部分は、まず「目」。そして「口元」。
- リラックス状態だと、筋力のバランスが良くなり、魅力的な笑顔になる
- 緊張していると、筋肉のバランスが崩れて、魅力的ではない笑顔になる
ポイントはわかっても、具体的にどうすれば良いのか。
リラックスを意識すると、むしろ力が入るかもしれません。
覚えておいて欲しい、笑顔のコツが1つだけあります。
それは「頬壁を見せる」こと。
頬壁とは、ほっぺの内側にあるピンク色の肉の部分です。
頬壁が少しでも見えると、健康的で印象の良い笑顔になります。
人の第一印象は口元で決まるって以前林先生の初耳学で紹介されていた。頬壁と言って、口の内側の肉が見えているかどうかで人の印象はがらりと変わるのだとか。全部が全部そうというわけじゃないとは思うけど、マスクをしていると口元が隠れてしまって、勿体無い。
どうせなら良い印象を受けたいよね。 pic.twitter.com/nlNW12yu6a— 萌えとエモと萌黄えもな椎名織奈 (@anime_eternel) February 6, 2019
ユンギスマイル😁
頬壁が見える笑い方は、
人に好印象を与える最高の笑顔なんだって。 pic.twitter.com/Lp3LPpYapm— mmmmmmmm (@AGUSminminSUGA) March 22, 2021
では、どうすれば頬壁が見えるようになるのでしょうか。
笑顔トレーニングと言っても、ちょっと検索すれば様々な方法が見つかります。
表情筋を鍛えるストレッチや、口角アップトレーニングなど、ぜひ自分でも調べてみてください。
ここでは3つの方法をお伝えしますが、どんな方法でもポイントがあります。
- 簡単にできること
- 継続できること
- つねにリラックス
難しくて続けられない方法は、選ばないようにしてください。
それでは、接客に使える笑顔のトレーニング方法を紹介します。
①ウンパニ体操
早稲田大学人間総合研究センターの菅原徹博士が提唱するフェイシャルエクササイズです。「ウンパニ」と発音をしながら、表情筋の体操をしていきます。
具体的には、以下4つのステップの通りです。
<ウンパニ体操のやり方>
- 1.口を尖らせて、目を見開きながら、「ウ~」と発音。
- 2.「ン~」と言いながら、目と口をきゅっと閉じて、顔の中央に寄せる。
- 3.「パ~」と解放するように、大きく口を開け、息を吐き出す。
- 4.下あごを少し上げる感じで、上下の前歯を軽く嚙み合わせて「ニ~」と笑顔に。
②目標をつくる
接客をする上で、笑顔を目標設定にすることが有効です。
ただし笑顔を目標にするというのは、成果がわかりにくいものです。「笑顔で接客する」だけでは具体性がありません。またモチベーションが上がらない目標を立てても意味がありません。自分がやりたいという気持ちが湧く目標を立てます。
<笑顔の目標設定>
- 3ヵ月以内に、お客様から「笑顔が素敵」だと言われるようになる。
- 1年以内に、「笑顔が絶えないお店」としてお客様から評価されるようになる。
など、個人だけではなく、チームやお店のメンバーが一丸となって、笑顔で接客することを目標にしてみてもいいでしょう。
③とっさに笑顔を作る
笑顔で働くことが大切だとはいえ、ずっと笑顔で仕事し続けるというのは人によっては難しいということもあるかと思います。
特に飲食業界の場合、お客様が多くお見えになる時間帯や、忘年会・新年会などのシーズンは忙しくなればなるほど自分の事でいっぱいいっぱいになりがちです。
体力的にしんどいなぁという時や、プライベートのことで落ち込むなど気分的に笑えないときもあるでしょう。笑顔トレーニングをしていても、できない日だってあるものです。
そんな時、とっさにできる笑顔の作り方をまとめてみました。
<笑顔を作るコツ>
- 背筋を伸ばしてまっすぐ立ち、口角を上げて笑ってみる
- 口角を上げるのが難しいときは、大き目の声で「い」と言う
- 忙しい時、怒ってしまいそうな時こそ笑顔を意識する
- よかったこと・楽しかったことを思い出す
最後の「よかったこと・楽しかったことを思い出す」ためには、日頃から良い出来事や嬉しかったことをストックしておくことで、大変なタイミングでも冷静になって笑顔の自分に戻ることができますよ。
笑顔は人に伝搬します。話す相手が笑顔だと、安心感が増してコミュニケーションがスムーズになります。また、無理にでも笑顔を作ることで、自律神経を整え脳がリラックスするので、忙しい時こそ笑顔を意識しましょう。
面接で自己PRに活かすために
魅力的な笑顔の作り方をお伝えしましたが、笑顔は自分の強みになるのかをテーマに考えてみます。
とくに面接の場面に、シチュエーションをしぼります。
笑顔が武器であると、自己PRして評価につながるのでしょうか。
「誰よりも明るい笑顔が強みです」
「どんな時でも笑顔で接客します」
残念ながら、どれだけ笑顔に自信があっても、接客が得意であっても、何もプラスにはなりません。
しかし突破口はあります。
笑顔で接客をすることで、どんな成果があったのかを伝えることで、評価されやすくなります。
例えば、
- リピーターの獲得した
- 接客を指導する人材育成の担当を任された
などの経験を、具体的なエピソードや成果とともに伝えてみましょう。面接がうまくいかない人の共通点として、自己分析が足りていません。
面接では相手に伝わるレベルまで落とし込んでおく必要があります。面接で聞かれる内容や、評価されるポイントは、あらかじめ想定できます。きちんと伝わる自己PRができるように、仕事によって得られたスキルや成果などを、掘り下げて考えてみてはいかがでしょうか。
【面接対策に活かせる記事】
接客における笑顔の作り方をテーマに、ノウハウをお届けしてきました。
今回の記事を活かして、笑顔の苦手意識を克服して、接客力アップを目指してくださいね。
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