ゆとり・さとり世代を即戦力に!やる気を引き出す指導法

2002年度施行の学習指導要領を受けて育った「第二次ゆとり教育」の若者が大学を卒業し、社会人になって今年で1年が経過しました。「調べ学習」や「生きる力の育成」を重視した教育は、学力低下を招いたとして批判されることも少なくありません。

『ゆとり』というとたとえば「ストレス耐性がない」「仕事よりもプライベートを優先する」などといったネガティブなイメージを持たれている世代。ですが実は、ゆとり世代は指導次第では思わぬ戦力に化ける、可能性を秘めた人材でもあります。
この記事ではそんなゆとり世代、またはさとり世代を即戦力に進化させるための指導法、やる気の引き出し方についてお話していきます。
 

ゆとり世代&さとり世代のイメージって?

『ゆとり世代』『さとり世代』を即戦力に! やる気を引き出す指導法

 
ゆとり世代・さとり世代のイメージは、一般的にはややネガティブなものが多いです。「これだからゆとりは~」と言われるように、しばしば揶揄される傾向にあります。中でもよく言われるのが以下の3つになります。

  • 言われたことしかしない、できない
  • 怒られ耐性がない
  • 無欲で労働意欲がない

他世代からの批判において、もっとも見受けられるのが「言われたことしかしない」「怒られ耐性(ストレス耐性)がない」ということです。

さらにゆとり世代は「無欲な世代」ともいわれており、出世したりより良い暮らしを手に入れたりといった向上心がないことから「さとり世代」などとも呼ばれています。
このようにネガティブな印象を持たれがちなゆとり・さとり世代ですが、実は指導や教える人の実力によって長所を発揮する世代でもあります。

自主的に動くように育てるには?

『ゆとり世代』『さとり世代』を即戦力に! やる気を引き出す指導法

 

ゆとり・さとり世代を自主的に動くように育てるには、あえて「指示しない」ことが大切です。
ゆとり世代の新人は主体的に動くことができず、上司からの指示を待つ「指示待ち人間」になってしまいがちです。
それは一体どうしてなのでしょうか?
近頃の若者には「リスク回避志向」があるといわれています。
それは悪いことではありませんが、挫折や敗北を避けたいという思いから指示されたことをそのとおりにこなす、「マニュアル人間」になってしまうのです。
指示待ち傾向のあるゆとり世代の新人を指導するとき、要となるのが「指示をしない」ということです。
基本的に新人は「自分が何を知らないのかすら分からない状態」です。きちんと指導することももちろん大事ですが、同じくらい大事なのは何が分からないかをきちんと理解させることです。積極的にこちらから働きかけるのではなく、新人自身の考える力を育むことで、自主的に質問してきたり、言われたこと以外にも取り組むようになります。
質問しやすい環境を用意し、自由にさせることが大切です。そのほうが押し付けるような教育よりも主体性を磨くことができます。
 

叱り方を工夫すれば上手く飲み込むことができる

極力怒らない。どうしてもというときも感情的に怒りをぶつけず、なぜ叱るのかをきちんと説明しましょう。
ゆとり世代の特徴として、ストレスに弱いということがよく挙げられます。これには諸説ありますが、過保護気味で育てられた人が多く、怒られ慣れていない世代であることが影響しているようです。叱られると萎縮してしまうといった新人は実際多く、ストレスが原因で退職してしまうケースもあります。
大阪の某企業で8年間人事部長をつとめているK氏に訊いてみたところ、さとり世代を相手にするときは「極力怒らないようにしている」とのこと。怒っても響かないなら、別の伝え方を考えるというのが重要だと言います。

しかしながらどうしても指導したり、叱らなければならない場面はあるかと思います。そんなとき、せっかく採用した新人を手放さないためには、叱り方を工夫する必要があります。
もっとも大事なのは「なぜ」叱るのかをきちんと説明するということです。
小中高と12年間ゆとり教育を受けてきた友人曰く、「自分がなんのために怒られているのかがわからないとモヤモヤしてしまう」とのこと。
「𠮟られることに納得できれば、内容がスッと頭に入ってくる」とか。
これはゆとり世代に限らないことですが、何がいけないのかを理解していない状態で叱られることは「理不尽な怒り」をぶつけられるのと相違ありません、ゆえにストレスを感じてしまうのです。ゆとり世代はその「理不尽な怒り」にこそ弱いのです。
理由をきちんと説明すれば、怒りは非合理的な理不尽ではなくなり、怒られる側のストレスははるかに軽減されます。
また絶対にやってはいけないのは「人格の否定」です。
以前「食ジョブコラム~食✕職~」の「実はやってしまいがち!?スタッフのやる気をなくす教え方NG集」という記事でも紹介しましたが、性格や人格の否定はご法度。
「なんでこんなこともできないんだ!」「お前はなにやってもだめだな!」などなど……怒りをそのまま感情的にぶつけるのは誰でもできます。
たとえば「〇〇が出来ていなかったのがよくなかったね。次から気を付けよう!」といった感じで、相手の性格・人格を否定せずミスやできなかった点を合理的に説明すると、ゆとり世代の新人はうまく飲み込むことができます。

 

「無欲」な人材から「上昇志向」を持った人材へ

実は学習意欲が高いゆとり世代。学習できることをアピールすれば仕事への取り組み方が変わります。
先にもお話した通り、ゆとり世代の若者には「リスク回避志向」があります。リーマンショック後の景気低迷に起因する社会へのあきらめのムードや、チャレンジして失敗したらどうしようといった危機感からあらゆるリスクを回避したいという思いがなによりも先行してしまうのです。「無欲」に見えるのはそのためです。
ですが、ゆとり・さとり世代は本当に無欲なのでしょうか?

終身雇用の制度が崩壊し、雇う側としてもキャリアを必ずしも保証できるものではなくなりました。そのためゆとり世代の若者は社内での競争志向に乏しく「どこで働いてもある程度活躍できる」といった自律的なキャリアの形成を強く望んでいる場合が少なくありません。

無欲にみえて「学習したい」という意欲があるのがこの世代の特徴です。
「上昇志向」を持った人材に育てるためには、指導する際に学習できることのアピールをすることが、仕事への取り組み方を変える最も重要な鍵であるといえます。
たとえば、K氏によると「好きなことや興味があることに対してが上昇意欲や知識はあるけど、実戦経験がない新人が多い」とのこと。そうした社員に対しては、実践経験の場を提供することで自律的な成長を促すのだとか。
またその前段階として「将来的なビジョンを共有する」ことも大切。どんなキャリアを望んでいるのか、何を成し遂げたいのかを把握した上で、接しているとのことです。
 

最後に

『ゆとり世代』『さとり世代』を即戦力に! やる気を引き出す指導法

 
「最近の若者は……」と揶揄される「ゆとり世代」「さとり世代」ですが、指導次第では即戦力にすることも可能です。
たとえば興味があることに対しては驚くほどの知識と才能を発揮するなど、長所も少なくなくありません。ネット環境やIT関係への適応力が高く、さらには柔軟に物事を考えることができる「可能性を秘めた」世代であるといえるでしょう。

より良い人材に育てるためにはゆとり・さとり世代の特徴を把握し、そのうえで適切に指導する必要があるといえます。

【参考文献】
豊田義博 『若手社員が育たない。「ゆとり世代」以降の人材育成論 』(ちくま新書)

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