ドーナツ屋に学ぶ、ブームが去っても逆転できる店(前編)
北海道にある千歳アウトレットモール・レラ店で、午前中にも関わらず200名以上の大行列が出来ていました。
ドーナツ店「クリスピー・クリーム・ドーナツ」(https://krispykreme.jp/)が北海道に初上陸するということで、トレンドに敏感な顧客が開店前から並んでいたのです。
「クリスピー・クリーム・ドーナツ」は、今や人気ドーナツ店として知られています。
しかし数年前までは、店舗数が激減していくという危機的な状況に陥っていました。
一体どのようにして逆転劇を果たしたのでしょうか。
また飲食店経営に活かせるヒントはあるのでしょうか。
今回は「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の逆転劇から、人気店づくりの秘訣を紐解いていきます。
「クリスピー・クリーム・ドーナツ」ブームは一瞬で去った
「クリスピー・クリーム・ドーナツ」は、1937年にアメリカ・ノースカロライナ州で誕生したドーナツ店です。1店舗で最大、年間2000万個のドーナツを製造しています。
日本でも製造工程を見られる製造スペースがあり、YouTubeでも動画が公開されて話題を呼んでいます。
日本に進出をしたのは2006年。
新宿サザンテラス店のオープンを皮切りに、「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の人気は一気に爆発します。今までに日本にはなかった奥深い甘さ。その味わいが、日本人の心をつかんだのです。
たった3日で、1万人ものファンがドーナツを購入。
店舗数も徐々に増えていき、一大旋風を巻き起こします。
想定していた10倍以上の売り上げを誇り、2014年度には60店舗を記録。
しかし、ここから「クリスピー・クリーム・ドーナツ」ブームが一気に去ることになります。
わずか1年で47店舗もの大量閉店に追い込まれました。
業績も連続赤字を記録。
なぜ、ここまでわかりやすい展開が起こったのでしょうか。
それは急激にヒットしすぎたことに起因します。言い換えれば、いわゆる一発屋現象。ヒット商品に見られる典型的なケースですが爆発的にブームを起こして、一瞬でブームが下火になる現象です。
さらにドーナツのヒットが終われば、パンケーキやポップコーンなどのスイーツがアメリカから輸入されて、次々とトレンドを起こして行きました。
またコンビニエンスストアでも、ドーナツの販売をスタート。ドーナツ戦争が起こることで、意外なライバルとの苦戦を強いられてしまったのです。
流行のドーナツから、ニーズに合ったドーナツへ
ピンチに追い込まれた「クリスピー・クリーム・ドーナツ」は、起死回生の策を講じます。
この策が見事に成功して、逆転劇を果たすのです。
では、どんな逆転劇を起こしたのでしょうか。
1つは、商品開発です。
まずトレンドに合った商品をリリース。
いわゆるインスタ映えするドーナツです。
健康志向の現代において、「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の商品はどちらかと言えば時代に反しています。甘みが強くてカロリーもある。その代わりに、見栄えは抜群です。
フォトジェニックする期間限定商品を次々と投入。
例えば、
夏季限定フルーツドーナツ
ハロウィン限定ドーナツ
クリスマス限定ドーナツ
など。
若い女性を中心にインスタ映えするドーナツとして支持を獲得して行きます。
さらには日本人の好みに合わせたドーナツも開発に成功。甘さを控えた「ブリュレ グレーズド」です。
クリームが詰まったドーナツをバーナーで炙って、”カリッ ふわっ とろ~り”という3つの食感を実現。
オリジナルの「イーストドーナツ」を超える大ヒットシリーズとなります。
顧客の嗜好をきちんと読み取った商品が、逆転劇を果たす起爆剤となりました。
さいごに
顧客の消費体験を満たす戦略を、次々と展開していくのです。
具体的な施策を次回のコラムで解説します。
さらに、「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の逆転劇から飲食店経営に活かせるノウハウも解説します。