なぜ焼鳥チェーン店「トリキ」はあんなにも安いのか?前編

今回のコラムは飲食業界に興味のある方必見!

「なぜトリキは美味しく、あんなに安いのか?」という、筆者の長年の疑問に決着をつけるべく、超人気チェーン店「鳥貴族」の決定的な秘密に迫ります。

298円の秘密を解明!なぜトリキはあんなに安いのか?

トリキこと「鳥貴族」は、大阪市浪速区に本社をもつ株式鳥貴族が経営する居酒屋系焼鳥店。均一価格、298円というコストパフォーマンスは全国の大手飲食チェーンの中でも群を抜くもの。国産国消の食材を使用した上質な焼鳥・ホスピタリティ溢れる接客・木のぬくもりを感じる非日常空間にこだわり、創業以来の低価格と高品質を守り続けてきました。

2018年7月の調査では、「鳥貴族」は兵庫県から千葉県までの各エリアに経営の範囲を広げ、現在では全国672店舗にも展開していることがわかっています。いまや知らない人のほうが少ない、人気大型飲食チェーン店へと成長しました。

ボリュームも満点で、味も美味しい。なのに全品298円とコスパは抜群。「安くて美味しい」無敵のブランド力への疑問に決着をつけるべく、今回は飲食店よりも業界のことを詳しく知る、現役営業マネージャーに直接取材。298円の謎を解明することにしました。

❝安くて、旨い。❞その秘密とは一体?

【現役営業マネージャー直伝】298円の謎に迫る!全国で大人気の焼鳥チェーン店「トリキ」はなぜあんなにも安いのか?

品質の高さに負けぬこの安さ。抜群のコスパが実現する理由とは何なのでしょうか?飲食業界に興味のある男女10名に問いかけたところ、

・海外雇用に力を入れ人件費を削減しているから
・チェーン店だからこその大量仕入れをしているから
・駅近など好立地にあるためそもそもの顧客数が多いから
・家賃が安いから etc.

と、上記のような意見が多数あがりました。

それを聞いた現役営業マネージャーIさんは「みんな、正解ですね。」と回答。加えて「確かにそのどれもが正解で、色々な要素が考えられる。だけど、鳥貴族にはもう一つ、決定的な企業努力があります。」と業界人ならではの見解を述べます。

最高の「安さ」を実現できる理由=企業努力

現役の飲食営業マネージャーに聞く!トリキはなぜあんなに安いのか?

数多くある鳥貴族の企業努力の中からIさんが重要視するのは
①立地(家賃)②人件費(動線)③原価 の3点。実はこれ、三大経費の黄金比と呼ばれるほど、ビジネスの成功には欠かせない大事な要素なのです。また、この3点に関しトリキが成功した「ある戦術」を真似している飲食チェーン店も多いのだとか。ではトリキが実践したの企業努力の具体的な対策とは何なのでしょうか?

① PLの削減!出店は「空中」を狙って家賃を下げる

現役の飲食営業マネージャーに聞く!トリキはなぜあんなに安いのか?

まず1つは、出店の場所。
皆さんは、鳥貴族は路面の出店が少なく地下やビル中などの「空中」に出店していることが多いということにお気づきでしたか?

この出店場所によって違いがでるのは賃金の差。
ある調べによると、路面(1階)と空中(2階以上)の家賃の差は約1.8倍にも上ることが明らかになっています。

その違いを計算してみると、大阪市中央区の心斎橋駅から徒歩3分のとある1階路面の物件が家賃972,000円であるのに対し、空中にあるだけで家賃が月額194,400円。つまり、差額はなんと777,600円であることが分かります。

飲食の三大経費といわれる賃金を極力抑え、長年培ってきた「安くて旨い」ブランド力で集客することで「鳥貴族」は支出を抑え利益を生み出すことに成功していたのですね。

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②動線がカギ!人件費が驚くほど削減できる仕掛け

2つめは店内に仕掛けがありました。それは稼働中スタッフが接客をする際の動線です。
鳥貴族には、より早く、より効率よく、オペレーションできるよう店内の構造に工夫がなされています。下記図をご覧ください。

現役の飲食営業マネージャーに聞く!トリキはなぜあんなに安いのか?
※ピンク部分は客席をイメージ。

Aの図は近年人気の個室居酒屋。赤く塗られた動線(スタッフが通る道)上に店員は動き、料理を運んだり、注文を聞きに行きます。一方Bは鳥貴族の店内をイメージした居酒屋の空間図です。動線は短く、キッチンとホールの間に中間バッシング地点があるのが特長。この構造にすることで、

①全スタッフがどこにいても全体を見まわせる
キッチンまで入らなくとも料理を運んだり食器をバッシングできる
 ↓
②動く距離が物理的に少なくなる
 ↓
③オペレーションがしやすくなる

というメリットが生まれ、結果、三大経費の1つ「人件費」を削減することが出来るのです。

驚くべきは実際に削減される人件費の差。

Aの動線を歩くのに10秒
Bの動線を5秒

として考えてみましょう。AとBではたった5秒の差しかありませんが、これを一日に100回繰り返すと、およそ8分の差がでます。「たかが8分じゃないか。」と感じた方、本当に「たかが」でしょうか?

毎日8分ある差を1か月(30日間)で計算すると、月間の違いは4.1時間。
さらに1人のスタッフを1年間雇用するとトータルでロスする時間はおよそ1520時間に遡り、時給1,000円の計算で考えた場合、結果1人あたり152万もの差が生まれることが分かります。

思わず身震いしてしまうコストの額。これを知っているだけでも無駄な稼働を減らすことができそうですよね。

また、場合によっては動線を短くできない構造の店舗もあります。そういった場合はタッチパネルを導入するなど各店舗に合わせた工夫をすることで、人件費を削減しようと努力しているのです。

③仕入れ原価は、丸々一頭が一番安い

現役の飲食営業マネージャーに聞く!トリキはなぜあんなに安いのか?

3つめは原価の削減。
仕入れ原価を下げるにはまとめて大量に仕入れすることがいいというのは有名な話。飲食サポート者の現役営業マネージャーのIさんは、大量仕入の仕組みを以下のように語ります。

「例えば牛肉の仕入れ。部位と一頭丸々仕入れるのでは原価もロスも歴然に違います。とある大型チェーンHを例として考えると、頭の肉は牛丼屋で、胴の肉は寿司屋で、足の肉はファミレスで…という風に部位を系列店で割り振って使っています。すると一頭買いしてもロスが出ないし、一店舗に必要分の肉をトータル安く仕入れられるのです。」

かつて、某大型飲食チェーン店で働いていたIさんは上記のようなメリットを「スケールメリット」だと呼びます。

個店では厳しい仕入れ値の削減。大型チェーン店である鳥貴族の強みを活かした戦略です。

「トリキ」の安さは長年の企業努力にあった!

以上、全国で大人気の焼鳥チェーン店「トリキ」の成功の秘訣をご紹介しました。現役営業マネージャー直伝の戦略解説によって、鳥貴族が298円という低価格で高品質のサービスを提供できる理由が明らかになりました。

「やっぱりそうだったか…。」「なるほど、初めて知った!」など、様々な意見があるかと思いますが、本コラムが皆様がこれまで培ってきた飲食の知識に対し確信をもてる機会となれば幸いです。
今後飲食店で働いてみたいという方はぜひこの「トリキ戦略」を参考にしてみてくださいね。

【参考URL】
・鳥貴族のホームページ:https://www.torikizoku.co.jp/

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