失敗する経営者が微妙なアイデアしか出せない理由(後編)
その理由と対策について、シリーズで解説しています。
前編では、失敗する経営者に共通する3つのポイントを挙げました。
■【飲食店開業】なぜ失敗する経営者は微妙なアイデアしか出せないのか 前編
https://colum.shokujob.com/wp/news/2019/06/6471/
中編では、直面している問題に向き合って解決をするため、良いアイデアを出すために、ひとり会議という方法を紹介しました。
■【飲食店開業】なぜ失敗する経営者は微妙なアイデアしか出せないのか 中編
https://colum.shokujob.com/wp/news/2019/06/6485/
今回は、ひとり会議の具体的なやり方を解説します。事例として、飲食店の開業準備している状況を想定します。
ひとり会議・実践編
ひとり会議における、3つの手順を振り返っておきましょう。
- <1>現在、直面している問題を書き出す。
- <2>どうなれば良いか(ゴール)をイメージして書き出す。
- <3>どうすれば実現できるのか(TO DO)を考えて書き出す。
<1>~<3>のやり方を、それぞれ説明します。
<1>現在、直面している問題を書き出す。
開業に向けて今目の前にある課題を書いて、整理していきます。
(問題例)
- 看板メニューがない。
- お店のコンセプトや強みが決まらない。
- 価格が設定できていない。
- 仕入れ先が決まらない。
問題例をいくつか挙げましたが、書き出すことによって、何を解決したいのか明確にしていきます。しかし上記の内容は具体的ではありません。前編でも指摘をしましたが、漠然と考えても、漠然とした考え方、行動しかできません。わかる限りで細分化していくことをおススメします。
例えば「看板メニューがない」という問題を、より具体化してみましょう。神戸でオープン準備をしているイタリアンレストランのオーナーシェフに、筆者が質問をしてみました。(質問内容はひとり会議と同じですが、インタビュー形式で聞いていることをご了承ください。)
オーナーシェフが明らかにした問題は、以下の通りです。
「創作イタリアンのお店にしたいけど、看板メニューをパスタにするか、ピザにするかで悩んでいる。パスタは麺よりもソースが自慢で、本場仕込みの味わいを堪能できる。ピザは、生地よりも創作系の具材にこだわっているので、ほかにはない創作ピザが楽しめる。でも〆料理ではなく、アラカルト系の料理を看板メニューにしても良いとも思っている。コレという決め手がない。食べてもらえたら気に入ってもらえる自信はあるが、メニュー表で見ると、どこのお店にもあるような料理になってしまう。どんな看板メニューで売れば良いかわからない。」
このように現在、直面している悩みや解決したいことを言語化していきます。<1>が完了すれば、次のステップです。
<2>どうなれば良いか(ゴール)をイメージして書き出す。
リストアップした問題に対して、どのようなゴールにしたいのかを考えてみましょう。
(ゴール例)
- お店だけの名物料理を目当てに、ファンが足を運ぶ。ただ名物というだけではなく、お店のコンセプトとも結びついている。
- お客様が来店したくなる魅力あふれるコンセプトや、ライバル店にはない強みを打ち出している。
- ターゲット層にとって適正価格でありながらも、ライバル店よりはリーズナブルで、利益が残る価格で販売している。
- 食材ごとに、それぞれの独自ルートで仕入れができて、良い条件で取引ができる。仕入れ先とはただの売買する関係ではなく、最新の飲食情報を交換できるパートナーとして付き合える。
<1>で挙げたイタリアンのオーナーシェフにも、ゴールを考えて頂きました。掲げたゴールは、「イタリアンに精通した玄人ウケする看板メニューで、玄人のファンが集まるお店にすること」でした。
オーナーシェフは某有名ホテルのシェフとして、10年以上の経験を積んできました。仕事が終わってから、夕食を食べに行ける美味しいお店が、近隣には少ないことに気が付いたそうです。
神戸にはイタリアンのお店が多数集まっているにも関わらず、プロ好みのお店があまりない。ホテルの同僚や、近隣レストランのシェフ仲間とも同じようなことを話していたそうです。ホテルの味なら勝負できるかもしれない、プロ好みの味にも精通している自分ならできるかもしれないと、仮説を立てました。
結果として玄人が通いたくなるお店で、玄人に好まれる看板メニューをウリにできないかとゴールを設定しました。
<3>どうすれば実現できるのか(TO DO)を考えて書き出す。
いよいよ最後の作業です。どうすれば、ゴールを実現できるのかを考えていきます。TO DOリストして、行動できることを書き出していくのが良いでしょう。
さきほどのイタリアンのオーナーシェフが、実際に行ったことを説明します。
玄人ウケをする看板メニューを開発するために、TO DOに書き出したことは試食です。実際にパスタやピザなど、いくつかの料理を試作して、周辺レストランのシェフに食べてもらいました。
お店のターゲット層になる玄人の反応を、試食によって確かめたのです。いわゆるテストマーケティングです。結果的に、意外なメニューに人気が集まりました。
オーナーシェフが出した看板メニューの答えは、玄人好みの〆カレーです。飲み歩いた後に、深夜でも食べられるカレーを名物料理にしました。
カレー店や洋食店にはないような、ホテル仕込みのカレーを開発。その日ごとの食材を使って、アラカルトのように楽しめる要素もプラスしました。さらにスープ状なので〆にも最適。
カロリーを抑えながら、味付けは濃い目にして〆でも堪能できるカレーを看板メニューとしたのです。
玄人ウケする、ちょっと豪華な〆カレー。仕事帰りにホッと一息つける、シェアが寄りたくなるお店にふさわしい看板メニューが、開業にあたって誕生しました。
さいごに
開業準備を想定して、ひとり会議の実践方法を解説してきました。飲食店経営者を成功させるかどうかは、アイデアのクオリティにかかっています。名案を出すために、ひとり会議を活かしてください。
なぜ失敗をする経営者は、微妙なアイデアしか出せないのかをテーマに、その原因と対策をコラムでお届けしてきました。失敗をすることは、決して悪いことではありません。成長をするためには必要な経験です。
しかし、しなくても良い失敗は避けたいものです。アイデアを生み出す力を身について、飲食店開業を成功に導いていきましょう