「一攫千金つば」とは?人気店から学ぶネーミング術
紹介をしたいのは、巷で話題の和菓子「一攫千金つば」。
金運・運気がアップする和菓子ということで、人気を集めています。
金運上昇をイメージさせるネーミング。
実際に、どのような名前の由来があるのでしょうか。
コラムを通して、ネーミングのコツもお伝えしていきます。
メニュー名を考案する際に、ぜひ役立ててください。
金運がアップするイメージ戦略に成功した「一攫千金つば」
「一攫千金つば」は、兵庫県芦屋市にある『うちこち製造・販売所』(https://www.facebook.com/uchikochi/)のオリジナル商品です。
ちなみに『うちこち製造・販売所』は、和菓子屋ではなく大人の駄菓子屋として営業しています。
主力商品は「一攫千金つば」なのですが、ほかにも自家製ぜんざい、かき氷、餃子、カレーなどを肴に、日本酒やハイボール、ビールを嗜むことができます。
実際に、筆者も『うちこち製造・販売所』で和スイーツをつまみながら、お酒を飲ませていただきました。
今まで甘いものを酒肴にすることはなかったのですが、まさに大人の駄菓子屋。贅沢な和菓子の楽しみ方を発見できました。とくに「一攫千金つば」にも使われる”一攫千金あん”は、辛口の日本酒と相性抜群。つい手土産にも購入させて頂いた次第です。
では、なぜ「一攫千金つば」という商品名なのか。
答えは、極めてシンプル。
打出小槌町という地にお店があることに由来しています。
エリアとしては、阪神電鉄本線「打出駅」の北側に位置。
近くには菅原道真公を祀る打出天神社もあります。
打出小槌町には、一寸法師で有名な民話が残っています。
小さな槌を振ると何でも願いが叶う、富がもたらされるというストーリーです。
この説話や土地柄にもとづいて誕生したのが、まさに「一攫千金つば」。
きんつば自体、縁起が良いとされる和菓子です。さらには駄洒落のように一攫千金と重なって、より強い金運を感じさせます。またユーモアもたっぷり。遊び心のあるお店のコンセプトに合致しています。。
小豆を用いていることから、一寸法師のミニマルな世界観とも結びつきます。
このような背景から、ただの和菓子ではなく手土産や贈り物にも喜ばれる人気商品となりました。
では「一攫千金つば」のネーミングから、どのような成功法則を学ぶことが出来るでしょうか。
商品はきんつばですが、一攫千金という言葉が先行している点にポイントがあります。
金運アップを連想させるフレーズが、顧客による第一印象を決定づけるのです。
お客様は第一印象を持ったまま一攫千金に続く、きんつばに対しても縁起の良いイメージを浮かべてしまいます。
これを社会心理学では、ハロー効果と言います。
専門的な定義に従えば、「ある対象を評価をする時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて、他の特徴についての評価が歪められる(認知バイアス)現象のこと」⁽¹⁾です。
まず目にする一攫千金を強く認識するによって、きんつばに対しても、金運アップにつながる印象を持ってしまう。さらには縁起の良さや地名との関係性、古くから伝わる説話なども踏まえて、高く評価してしまう原理が働いていると考えられます。
さいごに
とくに印象づけたいワードを先に置いて、商品名を後に付けるという法則が使いやすいでしょう。
一般的によく使われるのは、専門家や有名人、認定機関・団体の権威・知名度を利用するケースです。「○○医師が推薦」「モデルの○○さんがオススメ」「○○賞受賞」といったフレーズを見かけたことはないでしょうか。
具体的な事例として「モンドセレクション最高金賞受賞」というワードをつけて売り出されるケースが挙げられます。有名な商品にサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ<香る>エール」があります。
ちなみに、モンドセレクションとは「食品、飲料、化粧品、ダイエット、健康を中心とした製品の技術的水準を審査する民間団体であり、ベルギー連邦公共サービスより指導及び監査を受け、モンドセレクションより与えられる認証(この組織では賞と表記している)」⁽²⁾のことです。
世界的な権威のある賞によって、プレミアムモルツは他のビールとは一線を画したブランディングに成功してます。これこそハロー効果の影響力です。
ほかにも飲食店においては、異なるパターンでの使い方もあります。筆者が訪れた居酒屋では「牛乳嫌いでも食べられるクリームコロッケ」というメニューがありました。顧客が注文をするきっかけを、商品名によって与えることが出来るのです。まさにハロー効果が実感できるネーミング例と言えるでしょう。
今回の「一攫千金つば」を手がかりにして、お客様に認識してもらいたい印象を明らかにした上で、ぜひ人気商品となるネーミングをつけてください。
【参考文献・リンク】
(1)ハロー効果|Wikipedia