「お客様は神様です」の正しい意味と由来とは?クレーマー客への対応を学ぶ
お店よりも上の立場で、神様のように扱われるべきという考え方は、本来の意味ではありません。
しかし「お客様は神様」という言葉が誤解されて、飲食店におけるクレーム問題の引き金にもなっています。
今回は「お客様は神様」の言葉に込められた本当の意味や由来を知るとともに、クレーマーへ正しい対応方法も学んでいきましょう。
●目次
・日本で昔から伝わる「お客様は神様」という言葉
・そもそも「お客様は神様」という言葉はいつできたのか
・横行する悪質クレーマーは「お客様は神様」を悪用する
・クレーマーへの正しい対応を学ぼう
・お客様は神様なのか?まとめ
日本で昔から伝わる「お客様は神様」という言葉
「お客様は神様」は、日本で昔から耳にする有名な言葉です。
「お客様は神様」と聞いて、どんなイメージをお持ちでしょうか。好ましい人もいれば、あまり好ましくない方もいるでしょう。
悪い印象があるのは、「お客様は神様」という言葉を悪用する人がいるからです。
接客に携わる飲食関係者なら、「お客様は神様だろ!」という常套句で、理不尽なクレームをつけられた経験があるなんて人も少なからずいるはず。
クレーマーからの「お客様は神様」という言葉が印象に残っていると、前向きに使いたい気持ちがなくなるのも無理はありません。
しかし「お客様は神様」という言葉には、しっかりとした想いと意味が込められています。
そもそも「お客様は神様」という言葉はいつできたのか
「お客様は神様」という言葉について、詳しく見ていきましょう。
そもそもこの言葉はいつ頃にできた言葉なのでしょうか。由来について解説します。
「お客様は神様」は、1961年に演歌歌手である三波春夫さんが漫談家の宮尾たか志さんとの会話の中で生まれた言葉とされています。
三波春夫さんは、昭和を代表する歌手の一人です。1970年、大阪で開催された日本万国博覧会のテーマソング『世界の国からこんにちは』を歌ったことで知られています。
「お客様は神様」の言葉には、お客様を歌によって、芸によって歓ばせたい想いが込められているそうです。そのためには余計な考えを捨てて、真っ白な心にしなければなりません。それは、まるで神様に祈るときと同じような姿勢です。
このような意味で、三波春夫さんは「お客様は神様」と発言しました。言い映えれば、日本人が持つ「おもてなし」の精神をわかりやすく言い表した表現ではないでしょうか。
以降、「お客様は神様」はエンタテインメント業界ではなく、顧客サービスの分野に広く浸透していきました。伝わりやすいキャッチーであるため、飲食店などのサービス業界では接客での心構えを教育する際の標語として用いられるようにもなりました。
しかし、この言葉に込められた本来のメッセージを誤解して、「お客様は神様のように扱われるべき存在」とのニュアンスで使う人が出てきたのです。この結果、悪質なクレームをつける顧客が増えてしまう問題も起こっています。
言葉の由来が放置されて、表面的なフレーズだけが都合の良いように独り歩きしている状態です。
「お客様は神様」が持つ本質的な意味とは、クレームをつけるためのものでもありません。「顧客が上の立場」でもありません。お客様を神様のように扱うのではなく、歓ばせるための心構えです。
横行する悪質クレーマーは「お客様は神様」を悪用する
三波春夫さんにとっての「お客様」とは、つまり観客・オーディエンスの方々を指します。お客様は、神様だから何でも言うことを聞いて我慢しなさいといった意味は込められてはいません。
しかし「お客様を神様のように扱え!」と理不尽な要求をするような人がいるのは現実です。ここで日本労働組合総連合会による調査を紹介します。
接客業務従事者で顧客から受けた迷惑行為として、以下の内容がトップにランクインしています。
1位:「暴言を吐く」(33.1%)
2位:「威嚇・脅迫的な態度を取る」(28.5%)
3位:「説教など、権威的な態度をとる」(19.2%)
4位:「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」(16.7%)
5位:「従業員を長時間拘束する」(10.4%)
最近では、パワハラ・セクハラ行為やSNS・インターネットでの誹謗中傷をする顧客もいるようです。
このような行為には「お金を払っているんだからこれくらい我慢しろ。お客様は神様だろ?」という考え方が、影響しているのかもしれません。
何度も繰り返しますが、お客様は神様のような存在ではありません。崇めたり、服従する対象でもありません。お店とお客様は、あくまでも同じ人間として対等な立場です。
クレーマーへの正しい対応を学ぼう
「お客様は神様」の由来を知らず、意味を勘違いして、無茶な言い分を通そうとするクレーマーは今も大きな社会問題となっています。
クレーム問題を解決するためには、クレーマーに対する正しい対策方法を知って上手く対応できるように備えることが大切です。
「お客様は神様だろ」と言われた場合、どのような言い返しや論破をするのが正解なのでしょうか。
ここからは、対応テクニックを3つご紹介していきます。
1. 説教目的の長時間クレーマーには時間を切り上げる勇気が必要
クレーマーの中には「お店やスタッフの教育のためにわざわざ意見している」と言う人がいます。
こういったクレーマーは説教することを目的としているので、会話やクレームが長時間になる前に切り上げるほうが良いでしょう。
具体的な方法は、「申し訳ございません」「スタッフには厳しく申し付けます」「的確な指導をしていただき、ありがとうございます」と、ひと言返して、その場をサッと去りましょう。
「早く終わってほしい」と態度にあらわすのが、ご法度です。きちんと話を受け止めつつも、潔く切り上げることができなければ、話が長引いてしまうでしょう。
2. 激昂するクレーマーほど落ち着いて対応する
「責任者を出せ!」「土下座しろ!」などいったように、暴言を吐きながら激昂されることは、飲食店ではしばしば起こります。
こういったクレーマーには落ち着いた冷静な対応が求められます。理不尽な要求には取り合う必要はありません。自分たちができる対応だけを、淡々と説明しましょう。
余計な言い訳や反応、質問などは不要です。無理に機嫌をとったり、怯えたりすると、さらに弱みにつけ込まれるでしょう。
あまりにも酷い暴言が続くようであれば、クレーマーの名前や連絡先を聞いておきましょう。内容によっては、迷惑行為として警察に通報するケースが出てくるかもしれません。
3. 善意のクレームか悪質なクレームかを見極めて対応を変える
クレームを出す人たちは、全員が悪意を持ってクレームを出しているわけではありません。「しっかりと対応して改善すべきだ」と善意の意見もクレームの中にはあります。
つまり、善意のクレーマーと悪意のクレーマーを見極めなければならないということです。相手が話す事実や要求をちゃんと把握しましょう。
このような難しい判断をわかりやすくするために、クレーマーを判断する一定の基準を設けている飲食店もあります。例えば、値引きを要求された場合、法的な根拠を基準にすれば対応しやすくなります。
しっかりとした線引きができていれば、クレーマーから不当な要求が出た際には「残念ですが、そこまでの対応はできません」という風に粛々と対応できます。
クレーマー対応のテクニックとして、こちらの記事もお役立てください。
【クレームに関する記事はこちら】
心理学に基づくクレームをチャンスに変える対応方法を伝授!
クレームを改善したら、集客・売上アップにつながる(前編)
お客様は神様なのか?まとめ
「お客様は神様」の言葉の意味や由来を辿りながら、クレーム対応にも言及しました。
飲食店業界では悪質クレーマーによる被害が常に問題となっています。少し前の時代であれば、クレーマーによる不当な要求も仕方なく受け入れられることが多かったでしょう。
しかし、今はしっかりとした対応が求められていて、働く人たちを守ろうという風潮が主流となりつつあります。またお店は顧客と対等で、お互いに信頼関係を築いた上で、おもてなしをすることが重視されています。
そこには、お客様を歓ばせたいというお店の想いが込められています。「お客様は神様」という言葉の誤解がなくなり、本当の意味を取り戻していくことを願いたいですね。
飲食店の経営者側はクレーマーには堂々とした態度で対応し、従業員の方々が安心して働ける環境作りに取り組んでいきましょう。