なぜクラシック音楽をBGMにすると購買意欲が上がるのか|音楽ジャンル編
前回は、BGMのテンポと音量が消費者の行動や味覚に影響を及ぼすことについて解説しました。
簡単に振り返っておくと、以下の通りです。
①テンポの遅いBGMは、顧客の滞在時間を延長できて、アルコール飲料を飲む量が増える。
②大きい音は塩味や甘味を感じにくくさせる。
今回は、音楽のジャンルが与える効果について紹介します。
BGMによってワインの旨みは15%アップする
まずはニューサウスウェールズ大学のステファニー・ウィルソンの研究(1)から見ていきましょう。
人気の高いレストランのディナータイムに、ジャズ、クラシック音楽、イージーリスニング、ポップスのうち、どれか1ジャンルのBGMを流して調査。
顧客が食事に対して支払をする意思のある金額と、レストランへの評価についてアンケートを取りました。
結果は、高い金額を支払う意思を示したBGMはジャズ、クラシック音楽、ポップスでした。
レストランに対しては、ジャズが「活気にあふれて刺激的である」、クラシック音楽は「高級感があって洗練さている」、イージーリスニングは「安っぽい」、ポップスは「きびきびとしている」と評価されました。BGMがない場合でも、「安っぽい」という回答でした。
さらに興味深いのは、オクスフォード大学のチャールズ・スペンス教授による研究です。
彼は、音楽のジャンルによって料理を食べた際に感じる味、そして食欲の有無さえも変わることを論証しています。
例えば、スパイシーなインド料理にはハードなロック、寿司にはジャズ、中華料理にはポップス、イタリアンにクラシック音楽の組み合わせがいいことを、実験データとともに提唱。
とりわけ言及しておきたいことは、BGMとワインとの組み合わせです。彼の見解によると、BGMのない静かな環境でワインを飲むよりも、相性のいい音楽とともに飲んだ方が、約15%旨みが増すとのこと(2)。
具体的に楽曲と銘柄も述べています。
2004年もののシャトーマルゴー(Chateau Margaux 2004)には、チャイコフスキーの「弦楽四重奏曲第1番」。
そしてプイィ・フュメ(Pouilly-Fumé)には、モーツァルトの「フルート四重奏曲(第1番 ニ長調 K.285)」を推薦。
音楽の好みは、料理と同じく好みや主観が関係するので、彼の研究成果が絶対的に正しいとは言い切れません。
しかし、おススメの料理やワインをお客様にただ紹介するだけではなく、流しているBGMに合う料理やワインを提案することができるのではないでしょうか。これは1つの新しい演出であり、飲食店が提供できる新たな付加価値ではないかと、筆者は考えています。
さいごに
今回は、音楽のジャンルが消費者に与える影響下について解説しました。とくにクラシック音楽について研究成果を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
筆者自身は、オペラをよく鑑賞するので、ついレストランではBGMに耳を傾けてしまいます。好きな楽曲がかかれば、その世界観に合うワインをオーダーしてしまうほど。
しかしながら、はじめは理解が難しくて、好きになるのには時間がかかりました。クラシック音楽はあまり詳しくないという方も少なくないでしょう。
次回は、知識がなくてもBGMに取り入れられる有名なクラシック音楽を紹介していきます。
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(2)Melody on the menu: how a sprinkle of Mozart might give your meal zing|The Guardian