『りくろーおじさんのチーズケーキ』に人気が出る本当の理由①
りくろーおじさんの店 本店へ行ってきた!
明日のPococha配信で食べるチーズケーキをゲット🥞
焼き立てホヤホヤ👏#Pococha#たけ丸水産 pic.twitter.com/Gk5JIgyjM3— たけし@UneVenness (@une_takeshi) 2019年9月4日
連日、各店舗では焼きたてのチーズケーキを求めて沢山の顧客が列をなしています。近年、行列ができるスイーツとして挙げられるのは、タピオカです。タピオカは、第三次ブームとして流行っており、「食ジョブコラム~食✕職~」でもテーマに取り上げたことがあります。
根強い人気のあるタピオカですが、それ以上に60年超える歴史がある『りくろーおじさんのチーズケーキ』。なぜ『りくろーおじさんのチーズケーキ』は、トレンドに左右されずファンの心をつかみ続けているのでしょうか。
ものづくりや店づくりはもちろん、顧客へのホスピタリティにも迫りながら、その疑問をシリーズでひも解いていきます。
前編では、『りくろーおじさんのチーズケーキ』の紹介と、行列ができる理由を商品の売り方・見せ方に着目をして解説します。後編では、ファンの心をつかむ真の理由について、実例をもとに紹介します。
『りくろーおじさんのチーズケーキ』とは
みんなはりくろーおじさんのチーズケーキを知ってる?
わいが大阪に来たら絶対に食べる世界一美味しいチーズケーキ!!(個人的な感想です。)
この揺れを見て!!いじめたくなるよね!! pic.twitter.com/XWepQOd4Zl— せーやプール (@seiya09231) 2019年9月10日
そもそも『りくろーおじさんのチーズケーキ』が、どのような商品なのでしょうか。
『りくろーおじさんのチーズケーキ』は、1956年7月に創設したリクロー株式会社が手がけるチーズケーキ専門店です。
■りくろーおじさんの発祥
りくろーおじさんとは、リクロー株式会社の創設者であり、「焼きたてチーズケーキ」を世に送り出した西村陸郎氏のこと。
現在は、なんば本店・住之江公園店・岸里新本店・北区長柄店・大丸梅田店・JR新大阪駅中央口店・エキマルシェ新大阪店など大阪市内に11店の直営店を経営しています。このため大阪だけのスイーツ・大阪にしない名物土産として知られています。
お持ち帰り向けの商品を販売する店舗が多い中で、陸カフェROOMはじめイートインスペースがある店舗も一部あります。
主力商品は「焼きたてチーズケーキ」。他にも「ニコニコりくろ~る」「とろ~りプリン」「アップルパイ」などの和洋菓子、「天使の輪」「もちっこきなこ」「クインシーミルク」などのパン、そしてパーティー用のケーキなどもあります。
とくに群を抜いたこだわりがあるのは、社運をかけて開発されたという「焼きたてチーズケーキ」(6号(18cm)サイズ・ 725円)です。
<「焼きたてチーズケーキ」の紹介動画>
弾力性のあるフワフワの生地が特徴。チーズケーキの中央には、りくろーおじさんの焼き印が押されます。補足情報として、この焼き印は増量して押してもらうことができます。1つだけではなく、2つ3つと焼き印を無料で依頼することが可能です。
チーズケーキのこだわりは、何と言っても素材。『りくろーおじさんのチーズケーキ』のサイトには、「焼きたてチーズケーキ」には、このような解説がされています。
「輸出チーズの品質に厳しく、また生産技術も高度なデンマークの伝統ある工場から直輸入した豊かな味わいのクリームチーズを使用しました。各店舗に併設されたキッチンで1回に12個ずつ1日に何回も焼き上げています。底にちりばめたレーズンにもこだわっています。」⁽¹⁾
チーズ、レーズンだけではなく、チーズケーキの食感・仕上がりを良くするために最適な牛乳、卵が使用されています。味わいとして、アクセントになっているのはレーズン。チーズケーキの甘さを、レーズンの酸味が際立たせてくれます。
熱々のままでも、常温でも、冷やした状態でも美味しくいただけるように、「焼きたてチーズケーキ」は徹底して作られた商品です。
『りくろーおじさんのチーズケーキ』に行列ができる理由
大阪の手土産と言えば、『りくろーおじさんのチーズケーキ』というイメージを持っている人も少なくありません。
『りくろーおじさんのチーズケーキ』の店舗には、毎日多くの顧客で行列ができています。関西圏だけではなく、日本全国の来阪者、そして訪日外国人も、その長蛇の列に加わっている光景を目にします。
<行列で賑わう様子>
りくろーおじさんのチーズケーキのやつ、ホールサイズしかないんだ(´-`).。oO
く、食えん(*_*) pic.twitter.com/f5IMJ5FKED— もりたくん@ダニ🍊🐫(。=`ω´=)ぇ? (@takuku1) 2019年8月27日
なぜ、列が絶えないほど『りくろーおじさんのチーズケーキ』には支持が集まっているのでしょうか。
これほどまでに人気が定着した理由について考えていきましょう。
1つは、店頭でのパフォーマンスです。焼きたてのチーズケーキが並べられて、焼き印を押すまでの工程を、店頭で行います。
<朝日新聞社による取材動画>
視覚的に顧客を楽しませるというパフォーマンス以上の効果があると、筆者は考えます。それは匂いと弾力性です。
お店に近づいていくと、ほんのりと甘い香りが漂ってきます。匂いが、”大脳辺縁系”という記憶や感情をつかさどる器官に直接的につながっていることを、以前コラムで紹介したことがあります。
ベルギーワッフルで有名な「マネケン」の事例に、匂いをかぐことで購買意欲が高くなることを説きました。
『りくろーおじさんのチーズケーキ』においても、同じような効果があると考えられます。
チーズケーキを口に入れた時の、フワッとした生地の食感。
じわじわと広がっていく、優しい甘さと甘酸っぱさ。
トロッと滑らかに説けていく感じ。
これらの記憶が匂いをかぐことで、脳内に蘇るのです。食べたい、買って帰りたい、そんな欲求が、店頭から漂う甘い匂いによって刺激されます。
また目で見てわかる、フワフワ感もポイントです。焼き印を押すことも特徴的なパフォーマンスですが、それ以上に、焼き印を押すことで、チーズケーキがフワフワと揺れる様子が印象的ではないでしょうか。
この揺れ加減によって、チーズケーキがどれほど、ふんわりと柔らかいのか目で見てわかります。
<フワフワの様子>
りくろーおじさんのふわっふわのチーズケーキ✨ pic.twitter.com/83Lzr6jWUP
— 美味しいスイーツ (@hiroponpon_46) 2019年9月1日
明治大学農学部教授の中村卓農学博士⁽²⁾によれば、柔らかい食感は、日本人に好まれる傾向にあるようです。また大手食品メーカーであるミツカンによる研究⁽³⁾では、フワフワは、女性から支持を集める食感であるこが明らかにされています。
さらに柔らかいけど弾みがあるという、変化のある食感も、好まれやすいことが中村氏によって言及されています。
「焼きたてチーズケーキ」は焼き印を押した瞬間、フワフワと揺れるだけではありません。勢いよく弾むような様子が確認できます。柔らかいと同時に弾力性に富んでいる、つまり変化がある生地感ということです。
また一度、「焼きたてチーズケーキ」を食べたことがある人であれば、フワフワだけでなく、トロッとした生地の食感も舌に覚えがあるでしょう。
いわゆる、ふわトロ感といった、変化に富んだ食感は、まさに日本人好み。「焼きたてチーズケーキ」は、そのことが店頭の様子でわかるのではないでしょうか。
「美味しそう」「食べたい」といった欲求を喚起する言葉を、“シズル感”と言いますが、ふわふわ、ふわトロといった“シズル感”のあるパフォーマンスが、顧客の購買意欲を刺激していると考えられます。
<さいごに>
大阪にしか店舗がない『りくろーおじさんのチーズケーキ』に行列ができる理由を、店頭でのパフォーマンスに着目をして紹介しました。もちろん味が美味しいことは前提の上で、このような取り組みが、効果を発揮しているられます。
後編では、さらに『りくろーおじさんのチーズケーキ』の魅力に迫ってみましょう。行列ができる本当の理由を、ホスピタリティの観点からお伝えします。
【出典】
⁽¹⁾焼きたてチーズケーキ|りくろーおじさんの店
http://www.rikuro.co.jp/cheesecake/
⁽²⁾「口当たりと歯ごたえを見てみよう!(食感の見える化)」
⁽³⁾No.90 2007 年 秋号 おいしさ伝え、会話弾む「味ことば」 男性「旨い」に集中、女性「香り系」あれこれ堪能|ミツカン
https://www.mizkan.co.jp/company/newsrelease/tmp-images/000000523.pdf