焼肉市場学~A5ランク・炭火焼肉・国産和牛だけでは、なぜ勝てないのか~⑤

焼肉市場学~A5ランク・炭火焼肉・国産和牛だけでは、なぜ勝てないのか~⑤

焼肉市場分析をテーマにしたコラムを、5回のシリーズでお届けしています。

これまで焼肉がもつエンタテインメント性を解き明かしてきました。
また消費者が自分で調理をするという独自性にも着目。

コラムの考察を通して、ちょっとした贅沢をお客様が満たすことにフォースした戦略を重視しています。

4回目のコラムから、焼肉店の競争が激化する三宮エリアに注目しました。

「神戸牛」「神戸ビーフ」「A5ランク」「炭火焼き」といったセールスポイントに、絶対的な効果が見られなくなりつつあります。

今回が最終回。焼肉をエンタテインメント化させることについて、実例と共に考察を展開していきます。

焼肉をエンタメ化=「コト」をデザインする、という発想

「モノ」ではなく「コト」に着眼点を置いた消費スタイル
エンタテインメントとしての焼肉と言ってもイメージしづらいかもしれません。
前回のコラムで最後に主張したことは美味しい焼肉よりも、楽しい焼肉の重要性です。

もっと言えば、お客様が楽しめるサービスの提供。
一体、どういうことでしょうか。

これは昨今、脚光を浴びている「モノ」ではなく「コト」に着眼点を置いた消費スタイルと言えます。

「モノ消費」は、消費者がお金を使う際に、所有に重きを置いて物品を買うことで、「コト消費」は、所有では得られない体験や思い出、人間関係に価値を見いだして、芸術の鑑賞や旅行、習い事といったレジャーやサービスにお金を使うこと。近年では、消費者が「モノ消費」よりも「コト消費」を重視する傾向が出てきたといわれている。(1)

この解説から何を食べるかよりも、どこで誰とどんな食事をするのかが、食事体験では重視されていることがわかります。

言い換えれば思い出に残る食事や、他人と共有できる食事です。

今、消費者の心を掴んでいる「コト」は、インスタ映えする料理や店内空間ではないでしょうか。だからといって流行りに便乗して、フォトジェニックな仕掛けをすべきというわけではありません。

焼肉にとっての「モノ」は、「神戸牛」「A5ランク」に該当します。いくら「モノ」に力を注いでも、お客様の「コト」ニーズを満たしきるのは、極めて困難。

だからこそ楽しめる「コト」を仕掛けること、日常にはない体験をデザインすることを提唱したいのです。

焼肉をエンタメ化した実例

実際のケースとして、焼肉という主体的な消費行為を、ちょっと贅沢な「コト」体験へと昇華させている焼肉店を2店舗紹介します。

「炭焼神戸牛 神戸ホルモン 三宮生田店」「神戸焼肉 樹々」です。

両者の特徴は、空間・調理・調味料・サービスの面でオリジナリティを発揮していること。
具体的には以下の通りです。

■炭焼神戸牛 神戸ホルモン 三宮生田店(http://kobehorumon.com/free/4

<空間>
◆レンガ造りの内装、石造りの店内フロア。北野異人館や旧居留地をイメージしたレトロモダンな空間。
◆窓際のカップルシートは人気の個室。革張りのシートで高級感を感じる。ビルの7階にあるため、神戸の街並みを一望出来る。
<料理>
◆A4・A5ランクの国産和牛のみを使用。神戸牛はもちろん仕入れ状況によって各地から厳選した特選和牛を提供。
◆1万円以内で豪華な神戸牛コースが食べられる。まるちょうやあかせん、はちのすなどホルモンも充実。
◆特製のつけダレ、トリュフ塩、ゴマ塩をつけて食べる。ゴマ塩は、ネットショップでも販売中。
◆神戸ワイン・淡路島産の玉ねぎなど地産地消にこだわる。
<調理方法>
◆テーブルごとにお洒落な焼き台が設置されています。石張りの壁に貼られたステンドグラスで、異国情緒溢れる雰囲気を醸しています。
<サービス>
◆半個室のうち数部屋は、神戸の夜景写真(プロカメラマン撮影)をディスプレイに投影している。
◆1人4000円~6000円の予算感。ドリンクはすべて390円とリーズナブルな価格で提供。
<体験できる「コト」>
◆北野らしい明治・大正時代の雰囲気を味わいながら、最高級の焼肉をお手頃価格で食べることができる。女性の旅行客やデートで訪れたカップルに記念・思い出となるシーンを演出している。
◆料理・コース・調味料を豊富にすることで、多様な組み合わせをお客様が楽しめる

■神戸焼肉 樹々(http://www.jyujyu-yakiniku.com/

<空間>
◆全席個室。1席ごとに赤いカーテンで仕切られた半個室。緊張感を与えないプライベート空間で、高級感を演出している。
<料理>
◆A4・A5ランクの神戸内牛・和牛を使用。定番・希少部位からホルモンまで充実。
◆オリジナル料理の提供。飛騨の郷土料理の朴葉味噌で食べるホルモンの階段盛り。韓国のりに乗せたうにく。など。
<調理方法>
◆テーブルごとにコンパクトな囲炉裏が設置されている。囲炉裏の上で炭焼きをする。
◆排煙装置を設置しており、焼肉独特の臭いがつきにくい。
<サービス>
◆コンセプトは「ホテルのような接客」。ホスピタリティを理念としている。
<体験できる「コト」>
◆焼肉を食べに来たのに、まるでホテルに訪れたかのような接客を受ける。囲炉裏で焼肉を焼くという日常にはない体験も出来る。

さいごに

お客様が楽しめるお手伝いをすること
焼肉をエンタテインメント化する、すなわち思い出に残る「コト」を演出する考え方と成功事例を紹介してきました。

ポイントはお店が一方的に楽しませるのではなく、お客様が楽しめるお手伝いをすることです。

これが実現できれば、どうでしょうか。
ライバル店が集まっていたとしても、お店独自の「コト」に惹かれてお客様が集まってきます。

「モノ」だけではなく「コト」をセールスポイントにした店舗展開が可能となるのです。飲食業界でも独自の発展をしてきた焼肉だからこそ取り組めることを考察してきました。

今回は大変、長編となりましたが最後まで目を通して頂き誠にありがとうございました。
貴店のお役に立てれば幸いです。

【参考文献・サイト】
(1)モノ消費とコト消費|コトバンク 知恵蔵の解説

PAGE TOP